第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応
財務金融・税制
2023年度税制改正への対応
立憲民主党は2022年、税制調査会を中心に、各部門会議等で、関係団体から2023年度の税制改正に関する要望をヒアリングし、「2023(令和5)年度税制改正についての提言」を取りまとめた。提言は、①コロナ禍・物価高騰で困難な状況にある個人・事業者等への支援、②賃金上昇に向けた取り組みへの支援、③税制の所得再分配機能・財源調達機能の強化、④暮らしの安心を支えるための税制、⑤働き方や人生設計に中立な税制、⑥カーボンニュートラルの実現に向けた税制、⑦多発化・深刻化する災害に対応する税制、⑧地方財政の安定化、⑨多国籍企業による租税回避の防止、⑩納税環境の整備の10項目からなっている。立憲民主党は、政府・与党の税制改正大綱の決定に先立ち、本提言を財務省に申し入れた。
政府は2022年12月23日に税制改正の大綱を閣議決定し、同大綱に基づき、2023年の211回通常国会に「所得税法等の一部を改正する法律案」を提出した。同法案では、消費税のインボイス制度について、免税事業者がインボイス発行事業者(課税事業者)になる場合に消費税の納税額を抑える措置等が盛り込まれたが、これらは経過措置であり、根本的な解決とはなっていない。また、NISA制度の抜本的拡充も盛り込まれたが、金融所得の分離課税により生じている「1億円の壁」の解消策は示されず、格差是正の取り組みが極めて不十分であった。こうした理由から立憲民主党は同法案に反対したが、3月28日、与党の賛成により可決・成立した。
止まらない円安への当面の対策について提言
政府・日銀は2022年9月22日、急速な円安の進行を受けて、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入を実施した。しかし、その効果もむなしく、10月には32年ぶりに1ドル150円を超える円安を記録し、消費者物価は31年ぶりに3%上昇するなど、国民生活への悪影響は広がるばかりであった。
こうした状況を受け、立憲民主党は10月21日、「止まらない円安への当面の対策について」とする提言を財務省・日本銀行に申し入れた。ここでは、①実質賃金の引き上げを政府と日銀の共同目標に設定、②長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化、③為替介入の実効性を高めるための外交努力、④内外金利差の拡大を防ぐための外交努力の4点を提言した。
その後、日銀は12月20日の金融政策決定会合において、同提言に沿う形で長短金利操作の運用を見直し、長期金利の変動幅を従来の±0.25%程度から±0.5%程度に拡大することを決定した。
横浜税関を視察
財務金融部門は2022年12月、税関業務の実態を知ることを目的として、横浜税関を視察した。川崎外郵出張所、横浜税関本関、大黒埠頭コンテナ検査センターの現場を回るとともに、横浜税関長らと意見交換を行い、税関の取り組みや課題などを聴取した。211回通常国会で政府提出「関税定率法等の一部を改正する法律案」が審議された際は、視察を踏まえた質疑、附帯決議の取りまとめを行った。
「新しい金融政策」を発表
立憲民主党は、日銀新総裁人事の国会提示を前にした2023年2月3日、「『新しい金融政策』の実現に向けて」と題する提言を発表した。この提言は、日本の経済・財政にさまざまな弊害をもたらしている「異次元の金融緩和」を修正し、「新しい金融政策」の実現を図ることを目的とするもので、着実に改革を実行するという観点から、正確な現状認識に基づき、「新しい金融政策」に着手し、金融政策の正常化につなげるという具体的・現実的な工程表を示した。
ここでは、政府・日銀の共同声明を見直し、実質賃金の上昇を目標に定めること、長短金利操作のさらなる柔軟化・撤廃、日銀保有国債・ETFの安定的な処理などを提案した。
植田新総裁に賛成、内田新副総裁に反対
約10年間にわたり「異次元の金融緩和」を主導してきた黒田東彦日銀総裁らの任期満了に伴い、政府は、植田和男氏を新総裁、内田眞一、氷見野良三両氏を新副総裁とする人事案を国会に提示した。立憲民主党は、「新しい金融政策」の考え方に基づき、植田、氷見野両氏には賛成、「異次元の金融緩和」を政策実務の面から支えてきた内田氏には反対することを決定した。
なお、植田新総裁就任後初の金融政策決定会合では、「新しい金融政策」の趣旨に沿う形でフォワードガイダンスが修正された。
「新しい財政政策」を具体化
巨額の財政赤字、税・社会保険料の逆進性による格差の拡大、応能負担の低下など、日本の財政が抱える諸課題を解決するために「新しい財政政策」が必要であるとの基本認識の下、立憲民主党は2023年2月、同政策についての中間報告を取りまとめた。ここでは、①国家財政に「PDCAサイクル」を確立、②「控除から給付」で所得格差を是正、③「応能負担」を回復し、未来のための財源確保という3つの柱を掲げ、これらの政策の早期具体化を目指すことを確認した。
①については、中期財政フレームの策定や独立財政機関の創設などを規定した3法案からなる「国家財政におけるPDCAサイクル確立のための法案」、②については、消費税の逆進性を緩和するために「給付付き税額控除」を導入することなどを定めた「消費税還付法案」を、それぞれ議員立法として衆議院に提出し、継続審議となった。
防衛財源確保法案の廃案を目指して徹底抗戦
政府は、2022年12月に閣議決定した新たな防衛力整備計画において、2027年度までの5年間で総額43兆円規模の防衛費を確保することを決定した。211回通常国会には、その財源を確保するために「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」(防衛財源確保法案)を提出した。
同法案は「財源の確保」を名乗りながら、わずかな税外収入を確保するだけに留まり、「防衛増税」をはじめ、残る大部分の財源確保についての規定は全く存在しない欠陥法案であった。こうした理由から立憲民主党は同法案の廃案を目指し、衆議院財務金融委員長解任決議案、財務大臣不信任決議案を提出するなどして徹底抗戦したが、6月16日、与党の賛成により可決・成立した。(詳細 第3章 43兆円規模の巨額防衛費・財源)