第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応
経済産業・エネルギー(原子力)
経済産業部門では、政府提出法案への対応を協議したほか、政府のグリーン・トランスフォーメーション(GX)の課題について、経済産業部門、環境部門、環境エネルギープロジェクトチームが合同で、政府や関係団体およびNGOからヒアリングを行い、対応を協議した。環境エネルギーPTでは、ソーラーシェアリングを行う農業現場の視察のほか、各地で地元住民と意見交換を行うタウンミーティングを開催した。また若い世代の声を聞く「未来世代委員会」を党内に設置した。
大手電力会社の不祥事と料金値上げをただす
事業用電気の販売についてカルテルを結んでいたとして、公正取引委員会が2023年3月、電力会社5社に対し独占禁止法の規定に基づき排除措置命令および課徴金納付命令を措置した。このほか、新電力会社の顧客情報の不正閲覧や小売部門社員による経済産業省の再生可能エネルギー業務管理システムの不正閲覧等、大手電力会社の不祥事が続発した。
一方、2021年後半からの世界経済のコロナ禍からの急回復や、2022年のロシアによるウクライナ侵略を契機としたエネルギー情勢の混迷等による燃料費高騰のため、政府は2023年5月、大手電力会社からの電気料金(規制料金)の値上げ申請を認めた。
経産部門では、一連の大手電力会社の不祥事は電力自由化の中で公正な競争を阻害する重大な違法行為であり、こうした中で大手電力会社の規制料金の値上げは、国民の理解が得られるのか大きな懸念を持ち、関係省庁等へのヒアリングを通じて、不祥事の経緯と電気料金の引き上げ幅の妥当性等をただしつつ、事実関係の徹底究明と適正な処分、電気料金設定の査定結果などに関する透明性の確保等を政府に求めた。
また立憲民主党と日本維新の会は2023年6月、「電気料金高騰対策についての提言」を取りまとめ、経済産業省に申し入れた。(詳細 第3章 電気料金高騰対策)
コロナ禍後の中小企業を支援する法案に賛成
政府は211回通常国会に「中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案」を提出した。本法案は、信用保険での経営者保証に依存しない融資慣行の確立加速や、商工組合中央金庫の地域金融機関との連携・協業の強化等を図るものである。
立憲民主党は、中小企業への金融機能の強化を進めるため、経営者保証を求めない信用保証制度の要件の在り方や、今後の商工中金の完全民営化に向けた特別準備金の在り方等、必要な附帯決議を付すこととして賛成し、本法案は可決・成立した。
新増設伴う原子力発電活用の政府方針撤回を
岸田内閣は2022年7月、経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行し、経済社会システム変革を進める「GX実行会議」を設置した。岸田内閣はこの会議を通じて、原子力発電の最大限の活用を検討していた。
環境エネルギーPTは2022年12月、国民的議論なき原子力政策の変更中止、原子力発電の40年運転制限制の堅持、次世代型原発への建て替え・新設方針の撤回等を政府に申し入れた。
しかし政府は2023年2月、原発の運転期間延長や廃炉の決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えなど、原子力発電のさらなる活用を含めた「GX実現に向けた基本方針」(基本方針)を閣議決定した。これを基に政府は211回通常国会に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」(GX推進法案)、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源法案)を提出した。
次世代型原発の開発可能性を残すGX推進法案
政府提出のGX推進法案は、GX推進戦略の策定、GX経済移行債(移行債)の発行、成長志向型カーボンプライシングの導入、GX推進機構の設立が主な内容である。
立憲民主党は本法案について、政労使が脱炭素化に加速度的に取り組むため公的資金面も含めて支援する趣旨は理解するが、基本方針で将来の工程として2030年代に革新軽水炉の建設・運転が示され、移行債で調達される政府資金が原子力発電所の新増設に関わる投資に向かうことが想定されるほか、GX推進戦略の策定および移行債使用に関する国会関与の在り方等に課題が残ると判断した。一方、GX実現には雇用の確保、質の向上、円滑な労働移動が重要な課題であり、参議院での審議を通じて、立憲民主党、自由民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党の各会派等が政府案の基本理念に「公正な移行」を明記することで一致した。
このため立憲民主党は「公正な移行」を明記する修正案には賛成し、政府原案には反対したが、与党等の賛成によりGX推進法は成立した。
GX脱炭素電源法案は原子力の安全性に疑問
政府提出のGX脱炭素電源法案は、既存の再エネの追加投資促進や送電網の整備のための環境整備など、地域と共生した再エネの導入拡大支援と、安全確保を大前提とした原子力の活用や廃炉推進を行うことが主な内容だった。
立憲民主党は本法案について、再エネ導入拡大への支援は十分評価するが、原子力発電の運転期間について、事業者が予見し難い事由によって停止された期間を除外することでさらに延長を図ることは安全性に疑問があり、原則40年としてきた原子力発電所の運転期間の制限が骨抜きになることや、法案策定段階から原子力の利用政策に傾斜し、東京電力福島第一原発事故の反省の上に確立した原子力規制委員会の独立性を損なうおそれがあるなどの理由で反対したが、与党等の賛成によりGX脱炭素電源法は成立した。
エネルギー転換戦略を全国各地で意見交換
立憲民主党は2030年に再エネ電気50%、省エネ30%、2050年に再エネ電気100%、省エネ60%を目指す「エネルギー転換戦略」(改訂版)を2022年に取りまとめ、再エネ中心の地域循環型社会を目指すことを提案している。
環境エネルギーPTは党のつながる本部と連携し、全国7カ所で「環境エネルギータウンミーティング―りっけんと語る日本のエネルギーのいまと未来」を開催し、ワークショップなどを活用し、エネルギー転換戦略への理解と議論の深化を図った。