第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応
文部科学
文部科学部門では、教職員の働き方に関するワーキングチームを設置し、中間報告を行った。また、議員立法の提出、政府提出法案への対応のほか、都立高校入試への英語のスピーキングテスト導入問題や「ブラック校則」、不登校支援、2020東京オリパラをめぐる問題、宇宙政策等について取り組んだ。
学校給食無償化の実現に向けて
現在、学校給食費は公立小中学校ともに平均で年額約5万円程度の保護者負担がある。独自の取り組みによって無償化している市町村もあるが、子どもたちが安心して安全な給食を食べられるように、国による一律の支援が必要である。
立憲民主党は、かねてから無償化を推進し選挙公約にも掲げ、211回通常国会では、公立小中学校の学校給食費を無償化するための議員立法「学校給食法の一部を改正する法律案」を衆議院に提出した。与党も給食の無償化について一定の理解を示したものの、結局委員会の審議に応じることなく、法案は継続審議となった。
なお、政府が2023年6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」においては、学校給食に関する調査実施の決定にとどまっている。
もっと良い「教職員の働き方改革!」
立憲民主党は、文部科学部門のもとに設置した教職員の働き方に関するWTで2023年3月、「もっと良い『教職員の働き方改革!』子どもたちとしっかり向き合える環境整備のために(中間報告)」を取りまとめた。
さらに、その内容を軸とする議員立法「給特法廃止・教職員の働き方改革促進法案」を211回通常国会で衆議院に提出した。(詳細 第3章 給特法廃止・教職員の働き方改革促進法案)
希望する全ての人に、学びなおしの機会を!
人への投資を拡充し、リカレント教育やリスキリングを支える基盤を整備するため、文部科学部門と厚生労働部門は2023年3月、共同で「もっと良い学びなおしビジョン」を取りまとめた。(詳細 第3章 「もっと良い学びなおしビジョン」)
「はどめ規定」撤廃で性被害から子どもを守る
学校教育では「妊娠の経過は取り扱わない」とするいわゆる「はどめ規定」があり、性に関する包括的な知識を得る機会や環境の不足等、性教育の停滞を招く原因の一つとなっている。
文部科学部門は党ジェンダー平等推進本部と合同で、2022年10月、文部科学省に対し、小中学校の学習指導要領における「はどめ規定」の撤廃等を内容とする「学校教育における包括的性教育推進を求める申し入れ」を行った。
デジタル・グリーン分野の発展のために
政府は210回臨時国会に「独立行政法人大学改革支援・学位授与機構法の一部を改正する法律案」を提出した。デジタル・グリーン(脱炭素化)等の成長分野をけん引する「高度専門人材」の育成に向けて、意欲ある大学・高等専門学校の学部再編等の取り組みを支援するため、機構に大学や高等専門学校の学部等の設置その他組織の変更に関する助成金を交付する業務を追加するとともに、基金を設けるものである。
本法案に対しては、①第2次補正予算関連事項になったことによる金額の水増し、②2022年度中は基金造成までしか行われず、経済対策として適切でない、③複数年度の基金にすることで国会のチェックが働かなくなるのではないか、等が部門会議で指摘されたが、質疑や附帯決議で問題点をただしていくことを前提に法案には賛成し、同法案は可決・成立した。
私立学校のガバナンス強化を推進
政府は学校法人の不祥事が相次いだことなどを受け、私立学校のガバナンス改革を推進するための制度改正を行うため、「私立学校法の一部を改正する法律案」を211回通常国会に提出した。
部門会議では、評議員会の議決事項や理事の解任事由が限定されすぎていることなどから、今回の改正内容ではガバナンスが不十分であるとの意見があった。しかし、理事と評議員の兼職禁止、役員近親者の監事就任禁止などによって一定のガバナンス強化が見込まれることや、さまざまな設置主体によって運営されている私立学校の円滑な運営等を考慮してまとめられた経緯などから、法案には附帯決議を付して賛成し、同法案は可決・成立した。
研究開発力強化を後押し
政府は211回通常国会に、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構により設置される次世代放射光施設Nano Terasu(ナノテラス)の共用を促進し、科学技術に関する研究等の基盤の強化等を図るため、ナノテラスを特定先端大型研究施設に追加することなどを内容とする特定先端大型研究施設共用促進法改正案を提出した。
立憲民主党は、本改正が燃料電池や健康・医療、科学捜査に至るまでさまざまな成果が期待されるものであり、わが国の研究開発力の強化につながると考え附帯決議を付して賛成し、同法案は可決・成立した。
日本語教育の充実に向けて
わが国の在留外国人は2022年12月末で約307万人となり、留学生、就労者、生活者として日本語学習希望者が増加しているが、日本語教育の環境整備や質の確保等が不十分な状態にある。
このような状況を踏まえて、超党派の「日本語教育推進議員連盟」が中心に作成し2019年に成立した日本語教育推進法に基づき、政府は211回通常国会に「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案」を提出した。一定の要件を満たす「認定日本語教育機関」制度の創設と、日本語教育を行う者の資格を整備するものである。
立憲民主党が中心となって推進した政策であり、日本語教育の環境整備に資する法案であることから、日本語教員の処遇改善等について附帯決議に反映させたうえで賛成し、可決・成立した。
なお、立憲民主党は、法案に関連し、2023年5月に都内の日本語学校を視察した。
デジタル化の進展に合わせた著作権法の改正
デジタル化やネットワーク化の進展等で、誰もがコンテンツを創作・公表し利用する状況に対応するため、政府は著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等を内容とする「著作権法の一部を改正する法律案」を211回通常国会に提出した。
立憲民主党は附帯決議を付して賛成し、同法案は可決・成立した。