第3章焦点となった法案・課題への対応
被害実態を踏まえた実効性ある法制度へ性犯罪見直し刑法改正
被害当事者らが求め続けた法改正
強姦罪を強制性交等罪とするなど性犯罪を厳罰化する110年ぶりの刑法改正が2017年に行われた。ところが性暴力事件をめぐり2019年、各地の地方裁判所で無罪判決が相次いだ。これに抗議するフラワーデモなどが全国に広がり、被害当事者らは同意のない性的行為を処罰する不同意性交罪の創設などを強く訴えてきた。
2023年の改正では、強制性交等罪を不同意性交等罪に罪名を変更した。これまで「暴行・脅迫」「心神喪失・抗拒不能」としてきた処罰要件に加え、「アルコール・薬物の影響」、「(拒絶する)いとまの不存在」、「虐待」、「地位に基づく影響力」など8項目を例示し、これらの要因によって被害者を「同意しない意思の形成、表明、全う」のいずれかが難しい状態にさせた場合を、新たな処罰要件とした。
施行5年後の検討条項を設ける附則修正
また改正法は、公訴時効を5年延長し、被害時に18歳未満の場合は、18歳になるまでの期間も加えた。さらに子どもの被害を防ぐため、性交同意年齢を13歳から16歳に引き上げ、13歳から15歳の場合は加害者が5歳以上年長の場合に処罰し、わいせつ目的で16歳未満の子どもを手なずける行為も処罰する。そして盗撮被害を罰するため、性的画像の撮影や提供の罪も創設した。
立憲民主党は修正協議で時効の撤廃などを求めた結果、施行5年後の検討条項と被害申告の困難さに関する調査実施を明記する附則修正に与野党が合意したため、改正法は修正を加え全会一致で成立した。