毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2023
(第209回臨時国会、210回臨時国会、211回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

国土交通

国土交通部門では、国のコロナ特別融資の返済が本格化する旅行業や、線状降水帯への災害対応に関し国土交通省からヒアリング等を行った。また、政府提出の地域公共交通活性化再生法改正案、道路整備特措法等改正案については、有識者をはじめ様々な観点からヒアリングを行い、党としての方針を決定した。

国交省の元事務次官が民間企業に対して国交省OBを社長にするようポストを求めていた問題について、国土交通委員会質疑等で指摘、追及が行われた。国土交通大臣は当初、現役職員の関与はないと説明したが、省OBと現役職員の会食、非公表段階とみられる人事情報の省OBへのメール送信など、天下り規制に反する古き慣習が明らかになった。このため国交大臣は、国交委員会や同理事会の質疑の中で、再就職等監視委員会に調査を要請する考えを示した。これからも国会の役割としての行政監視、検証の重要性、公務員の健全な働き方を模索し、提言を続けていく。

持続可能な地域公共交通の再構築へ

超少子高齢化の進行、大都市部への長期的な転入超過傾向は変わらず、地方部からの人口流出が著しい中にあって、地域公共交通を将来に向け持続可能なものとしていくことは焦眉の課題である。立憲民主党は地域公共交通課題検討ワーキングチームで、自治体や有識者、関係団体からのヒアリング、鉄道・バス事業の現地視察を重ね、中間的な取りまとめを行った。また、211回通常国会では政府が提出した地域公共交通活性化再生法改正案について関係団体からのヒアリングを行った。

法案にある地域公共交通の「再構築」を議論するため国が設置する協議会については、地域が直面する課題に冷静に対応し、地域の人々の納得を得る場となるか、自治体や事業者負担の軽減につながるか、予算付けは目に見える形で計画的に分かりやすく、かつ中長期的な支援の枠組みとなるかなど、課題が山積していた。

立憲民主党はこれらの点を国会審議でただすとともに、安定的な財源の確保と分野横断的な支援の仕組みづくりの検討、協議会の構成員に住民や労働者、物流事業者等を含めるなど多様な意見が反映されるようにし丁寧な合意形成を行うこと、運転者確保への支援や設備の補修・更新費用への支援の充実などを委員会の附帯決議に盛り込んだ。立憲民主党も賛成し、法案は可決・成立した。

2023.2.24 地域公共交通課題検討WTがひたちなか海浜鉄道を視察
2023.2.24 地域公共交通課題検討WTがひたちなか海浜鉄道を視察

道路整備特措法等改正案に反対

政府は2005年の道路関係4公団民営化によって高速道路債務の確実な返済と将来的な無料化を定め、45年間の料金徴収期間を設定したが、2014年改正でさらに15年延長した。その際の国会審議でも、制度の抜本的な見直しが必要であると繰り返し指摘されていたにもかかわらず、政府は高速道路の整備政策、料金政策の在り方について先送りしたまま、211回通常国会で、今後92年間もの長期にわたり再び料金徴収期間を延長するため、道路整備特措法等改正案を提出した。

この改正は、約束された債務の確実な返済と高速道路の無料化を現世代の国民が事実上享受できないことを明白にするものであり、政府は未来世代への責任を果たすことから逃げている。立憲民主党は、事業の膨張を防ぐため、追加される事業の妥当性や余剰インフラ縮減の在り方について国会に報告することや、高速道路整備・料金政策の在り方について検討を加え、必要な措置を講ずる、との主に2点からなる条項を追加する修正案を提出したものの否決され、原案に反対したが、法案は可決・成立した。なお、これらの事項については附帯決議を付し、国の検討を促した。

「2024年問題」で貨物自動車運送事業法改正

2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限規制が適用されることによりドライバーの労働環境が改善される一方で、運送事業者の利益減少が見込まれる他、ドライバーの収入低下による離職が進み安定輸送が困難となることが懸念されている。関係団体からの要望を受け、運賃の適正化を促進するための「標準的な運賃」制度や、長時間の荷待ちなどの荷主企業の法令違反原因行為への勧告・公表を定める制度の時限措置を延長するため、超党派の議員立法により貨物自動車運送事業法改正を211回通常国会で成立させた。同時に国土交通部門として関係団体からのヒアリングを行い、法令順守の強化にとどまらず、適正な原価・利潤を含んだ運賃制度の構築等を通じドライバーの労働環境の抜本的な改善とトラック事業の安定化を図るため、今後さらに必要と考えられる対応を進めていくことを確認した。

空家法改正案に附帯決議を付し賛成

今後も続く人口減少とは逆に増え続けるのが空き家であり、増加傾向に歯止めがかからない空き家対策は急務である。政府が211回通常国会に提出した「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」は、空き家の活用を拡大するため市区町村が活用促進区域を定め、空き家の管理活用を担う団体を指定できるようにするほか、危険な空き家化を防ぐために所有者不在の空き家の処分を行いやすくするなど、自治体による空き家の活用・管理の幅を広げる内容であった。自治体等の現場からの要望もあり、人口減少時代にあわせ既存の住宅や土地を生かす政策への転換・推進は重要であることから、立憲民主党は賛成し、法案は可決・成立した。ただし、自治体やその支援法人など地方の負担が増大することから、区域指定の基準や手順、命令・勧告等の具体的な判断基準を国が示すことや、十分な予算措置や人材育成等のさらなる具体的支援、狭あい道路の拡幅等災害対策との積極的な連携等の附帯決議を付し、国の対応を促している。

2023.4.27 空家法改正案について関係団体よりヒアリング
2023.4.27 空家法改正案について関係団体よりヒアリング

「提言」反映し改正離島振興法成立

立憲民主党の離島対策プロジェクトチームは、「離島振興に対する提言」を2022年4月にまとめ、その内容を2023年3月に期限を迎える離島振興法の改正項目に反映させるべく自民党と協議した。その結果、離島振興法の基本方針に「橋梁」を明記させるほか、「介護ロボットの導入」「ドローンの活用」「遠隔教育」「公立学校の教職員の定数・処遇」「地域の実情に応じた再生可能エネルギーの活用」「感染症が発生した場合等における離島の住民生活の安定及び福祉の向上」「離島に係る規制の見直し」等を配慮規定に盛り込むことで合意し、210回臨時国会で「離島振興法の一部を改正する法律案」が衆議院国土交通委員長提案として可決・成立した。また、委員会決議「離島の振興に関する件」を採択した。