毎年9月に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2023
(第209回臨時国会、210回臨時国会、211回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

総務・倫理選挙

地方税法改正案に反対・交付税法改正案に賛成

政府は211回通常国会に「地方税法等の一部を改正する法律案」「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を提出した。

地方税法改正案については、立憲民主党は、①国と地方の役割分担に応じた抜本的な税源移譲が行われていない、②「ふるさと納税」の抜本的な見直しが行われていない、③森林環境税および森林環境譲与税、自動車関係諸税の見直しが不十分である、などの理由で反対したが、与党などの賛成多数で改正案は可決・成立した。

交付税法改正案については、法定率の引き上げがなされていないことや、2022年度からの1.4兆円の繰越金への依存、臨時財政対策債の根拠となる折半ルールの延長、退職手当以外の給与関係費の伸びが1.3%にとどまっていること、一般行政経費単独分が抑制傾向にあることなど、課題や問題は残されているものの、①一般財源総額について、前年度を上回る水準を確保し、地方交付税総額も前年度を0.3兆円上回る18.4兆円を確保し、地方のデジタル化や脱炭素化など新たな行政需要に苦慮する自治体の要望にも一定応えたものとなっていること、②臨時財政対策債の抑制など地方財政の健全化、将来負担の軽減が図られていることなどの努力を評価し、立憲民主党は賛成し、改正案は可決・成立した。

また問題点や懸念点について、委員会決議「持続可能な地方税財政基盤の確立並びに新型コロナウイルス感染症及び東日本大震災等への対応に関する件」に盛り込んだ。

2023.2.1 提出予定法案について、総務省・内閣府よりヒアリング
2023.2.1 提出予定法案について、総務省・内閣府よりヒアリング
2023.3.10 参議院本会議で地方税法改正案・交付税法改正案について質疑
2023.3.10 参議院本会議で地方税法改正案・交付税法改正案について質疑

農地を守る立場で国家戦略特区法改正に反対

政府は211回通常国会に「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案」を提出した。改正案は現在兵庫県養父市で実施されている、法人による農地取得の特例を国家戦略特区から構造改革特区に移行させる等を内容とするものである。立憲民主党は、公共財であり食料安全保障の基盤である農地を守っていく立場から反対したが、改正案は可決・成立した。

自治体議員のなり手不足対策に努力

議員のなり手不足対策として議員に係る請負に関する規制の明確化・緩和等を内容とする議員立法を求める3議長会などの動きに対し、立憲民主党は自治体議員ネットワークの意見集約等を踏まえ、慎重に議論してきた。

2023年の統一地方自治体選挙を前に法案成立を求める機運が高まったため、立憲民主党は法案起草前の協議に臨み、「立候補休暇制度」を求める検討条項の追加、委員会決議の採択、委員会での答弁によって、請負規制の緩和に対する歯止めや多様な人材の確保に関する考えを起草内容に反映することができた。その結果、議員立法「地方自治法の一部を改正する法律案」は衆議院総務委員長提案で210回臨時国会に提出され、立憲民主党は賛成し改正案は可決・成立した。

政府は211回通常国会に、地方議会の役割および議員の職務等の明確化、会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給等を内容とする「地方自治法の一部を改正する法律案」を提出した。

関係団体および3議長会から法案の早期成立を求められていたことや、特に会計年度任用職員の待遇改善を進めるため、立憲民主党は附帯決議を付して賛成し、改正案は可決・成立した。立憲民主党は引き続き、会計年度任用職員の実態調査や勤勉手当支給に必要な財源確保を求めていく。

2023年は衆参両院で地方分権推進決議が採択されて30年の節目であり、総務部門は有識者ヒアリング等を行い、道半ばの分権・自治の推進、地域主権型社会の実現を目指す決意を新たにした。

新会長下のNHK予算に賛成

前田前会長から稲葉新会長に交代して初めての予算となる2023年度NHK予算は、10月から実施の過去最大の受信料値下げ等により280億円の赤字予算となった。稲葉新会長の抱負、NHK改革の課題、ベアの引き上げ、衛星放送の1波削減、地域放送の充実、過労死問題と健康管理の在り方、新放送センターへの建て替え問題、郵便法違反問題の再発防止などをただしつつ、立憲民主党は賛成し、予算は承認された。また、ネット活用業務関連で放送法に抵触する不適切な事案が明らかとなり、立憲民主党はNHKに対しガバナンスの確立を求めた。

ビヨンド5G促進と地方放送局を守る

政府は210回臨時国会に「国立研究開発法人情報通信研究機構法及び電波法の一部を改正する法律案」を提出した。立憲民主党は、十分な予算・人員等の確保を強く求めるとともに、基金の透明性の確保等に関する附帯決議を付して賛成し、改正案は可決・成立した。

政府は211回通常国会に「放送法及び電波法の一部を改正する法律案」を提出した。マスメディア集中排除原則の安易な緩和や地域性の喪失等の懸念があるものの、放送の社会的責務を果たす地方局を維持するため、立憲民主党は附帯決議を付して賛成し、改正案は可決・成立した。

放送法の「政治的公平」の確保を目指して

立憲民主党が公表した2014~15年の内部文書を総務省が行政文書と認め、当時の安倍政権の圧力で、放送法の「政治的公平」の解釈が「一つの番組だけで判断することもある」とゆがめられたことが明らかになった。放送法の「不偏不党」や「政治的公平」は、ラジオ放送が戦争推進の一翼を担った反省により、権力による干渉や圧力を防ぐためのものである。現場の萎縮を招き、表現の自由を掘り崩す法解釈の変更を放置するわけにはいかない。

衆議院の小選挙区10増10減改正に賛成

2020年の国勢調査結果に基づき衆議院議員選挙区画定審議会がアダムズ方式を用いて行った勧告を踏まえた小選挙区割りの10増10減改定と比例各ブロックの定数改定を行う政府提出の公職選挙法改正が210回臨時国会で成立した。自民党内に1票の格差是正に後ろ向きな意見が見られたが、立憲民主党は、定数改定にアダムズ方式を用いることには2016年の関連法改正当時から賛成していたことから、改正案の確実な成立を与党に呼びかけるとともに、党政治改革推進本部の決定に基づき政府案に賛成した。また、衆議院倫理選挙特別委員会では26年ぶりに公職選挙法の選挙運動規制の見直しについて自由討議を行い、全会派が一致できる点は法改正を目指すこととし、211回通常国会で報告書をまとめた。