毎年9月に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2023
(第209回臨時国会、210回臨時国会、211回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

農林水産

農林水産部門では、政府提出法案の審査のほか、新 食料・農業・農村基本法検討ワーキングチーム、森林・林業政策ワーキングチーム、水産政策ワーキングチームをそれぞれ設置し、直面する農林水産業の課題について政府、有識者、関係団体等と活発な意見交換を行い、中間報告を取りまとめた。

2023年度畜産物価格決定に懸念

2023年度畜産物価格の決定に当たっては、政府が示した単価および数量は、酪農経営の実情を全く踏まえておらず、到底受け入れられるものではなかった。これに対して、立憲民主党は談話を発表し、①加工原料乳生産者補給金および集送乳調整金の単価の大幅な引き上げと総交付対象数量の維持・拡大、②情勢に応じた期中改定等の措置、③現場の声を丁寧に聞き現場が必要とする追加の対策を迅速に講じること、などを政府に対して強く求めた。

農林水産に関わる法案で他部門と連携

211回通常国会で各府省が提出した法案等のうち、農林水産分野に関わるものについて、他部門と協議した。法人による農地取得の特例を国家戦略特区から構造改革特区に移行させる等を内容とする「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案」については、総務部門と合同で、同法案に関する考え方を取りまとめた。また、「駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案」については、厚生労働部門と連携して審議を行った。条約については、外務部門と連携して「2022年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件」「世界貿易機関を設立する協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件」の審議を行った。

鳥インフルエンザ対策の強化

越境性動物疾病である高病原性鳥インフルエンザは、2022年度のシーズンに26道県84事例の発生が確認され、飼養鶏の殺処分対象羽数は過去最悪の約1771万羽となった。高病原性鳥インフルエンザがまん延すれば、養鶏産業は甚大な被害を受けるとともに、国民への鶏肉および鶏卵の安定供給が脅かされることとなる。

本疾病のさらなる発生と全国的なまん延の防止、生産者の経営継続等に向けて、養鶏業者のみならず、農林水産省をはじめとする関係府省、都道府県、市町村、関連事業者等の関係者が一致協力して対策にあたる必要があることから、立憲民主党は2022年12月、農林水産大臣に対し、発生原因と感染経路の速やかな解明、防疫対策の強化、風評被害対策、輸出再開に向けた協議、輸入検疫の強化など6項目からなる申し入れを行った。

競馬法の一部を改正する法律案を協議

210回臨時国会に政府から「競馬法の一部を改正する法律案」が提出され、審議された。本法案は、地方競馬全国協会(NAR)の畜産振興勘定から競馬活性化勘定への資金の繰入措置の恒久化のほか、日本中央競馬会(JRA)がNARの競馬活性化勘定へ必要な資金支援をする措置を5年間延長することや、JRAからNARの競走馬生産振興勘定への資金支援措置の恒久化などを主な内容としている。農林水産部門では、関係団体と意見交換等を行った。法案は農林水産委員会で競馬場周辺の観光との連携等来場促進の取り組みがなされるよう指導することなど9項目の附帯決議を付して、全会一致で可決・成立した。

食料・農業・農村基本法見直しを見据えて

政府は、2023年5月29日に開催した第16回食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会で食料・農業・農村基本法の検証・見直し検討に向けた「中間取りまとめ」を、同年6月2日に開催した第4回食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」をそれぞれ決定した。

立憲民主党は、農林水産部門の下に新 食料・農業・農村基本法検討WTを設置して、基本法の充実した見直しに向けて農林水産省や有識者、関係団体、農業者など、広く意見交換を行った上で中間報告を取りまとめた。主な内容は、①食料安全保障に資する直接支払制度の構築、②農村機能の維持、③みどり・環境の観点を加える、等である。立憲民主党は、これらの項目について農林水産大臣に提言するとともに、新たな食料・農業・農村政策を推進する上で、農林水産行政の展開に必要な人員を将来にわたって確保するため、2024年度定員要求で前年度を大幅に超える新規増員要求を行うよう申し入れた。

今後、この中間報告に全国の農山漁村の声を反映させ、地域とともに、最終取りまとめに向けた議論を進めていく。

2023.3.24 基本法の在り方など農政の諸課題について農林水産大臣に申し入れ
2023.3.24 基本法の在り方など農政の諸課題について農林水産大臣に申し入れ
2023.3.15 食料・農業・農村基本法について有識者と意見交換
2023.3.15 食料・農業・農村基本法について有識者と意見交換

森林・林業政策を積極的に討議

農林水産部門の下に森林・林業WTを設置し、林野庁、有識者、関係団体との議論を重ね、木材自給率50%を目指すこと等を主な内容とする中間報告を取りまとめた。

211回通常国会で政府より「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(クリーンウッド法改正案)が提出され、農林水産委員会で審議された。立憲民主党は、規制の在り方についての検討条項を追加することを内容とする修正案を提出し、否決されたが、無断伐採によって森林所有者の資産が損なわれることがないよう助言等を行うこと、国産材の安定的かつ持続的な供給を可能とするための体制の整備等を行うなど10項目の附帯決議を付して賛成し、法案は可決・成立した。

水産加工業の振興へ向け議論

農林水産部門の下に水産政策WTを再設置し、昨年に引き続き水産庁、有識者、関係団体等との意見交換を行い、漁業経営の安定や漁村地域の振興等を主な内容とする中間報告を取りまとめた。

211回通常国会では、政府から提出された、水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の有効期限の5年間延長を行うための「水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案」、長期的かつ計画的な漁港施設等の利用を図る事業の実施を推進する制度の創設等の措置を講ずるための「漁港漁場整備法及び水産業協同組合法の一部を改正する法律案」、2022年4月23日に発生した知床遊覧船沈没事故を受けての「遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案」の3法案について、農林水産委員会で審議し、いずれも全会一致で可決・成立した。