毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2023
(第209回臨時国会、210回臨時国会、211回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

環境

環境部門では、政府が211回通常国会に提出した「気候変動適応法及び独立行政法人環境再生保全機構法の一部を改正する法律案」について、熱中症対策の必要性には同意であるため賛成とし、法案は可決・成立したが、気候変動による影響の深刻度は増加しており、この10年の取り組みが今後数千年の未来に影響を及ぼすとした2023年3月の国連報告を踏まえ、質疑や附帯決議でさらなる気候変動対策の推進の必要性を訴え、提案を行った。

また、さまざまな環境問題に取り組む研究者や市民団体・NGO、ユースからヒアリングを行った。全国各地で問題となっている有機フッ素化合物(PFAS)汚染については、政府の対応状況のヒアリングに加え、地域住民と意見交換を行い、6月5日、環境の日に地球環境問題に取り組む決意とPFAS問題への対策を後押しするとしたネクスト環境大臣談話を発表した。

2023.5.31 PFAS問題に関するヒアリングを開催
2023.5.31 PFAS問題に関するヒアリングを開催

国への要望、PFAS汚染問題

わが国は、かつて多くの環境破壊をもたらした公害による被害者の悲劇と苦難の歴史を経験しており、被害者の苦しみが終わることはない。例えば水俣病は健康調査が実施されておらず、アスベスト問題は司法判断に基づく建材メーカー等による救済が実施されていない。

近年では有害性が指摘されているPFAS汚染問題が各地で発生している。暫定指針値を超える高濃度のPFASが検出された地域の住民は、水道水などを通じてPFASを人体に取り込んでしまう健康リスクや環境汚染に対する強い不安を抱えている。そのため環境部門では、沖縄、神奈川、東京の3地域の住民から直接、声を聞いた。

沖縄の住民からは、水道水や血液検査、普天間飛行場付近の小学校の運動場の土壌検査からPFASが検出されたこと、子どもの飲み水はペットボトル水にするなど各家庭で努力しているが、検出されても対処法がない状況であることが報告された。各地域の住民からは、希望者への血液検査の実施、健康相談窓口の設置、汚染源特定、土壌調査と汚染源除去等が求められている。

気候変動は社会を変えていくチャンス

環境部門は2022年11月、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の閉会後、会議に参加した気候変動を専門とするNGOやユースからヒアリングを行った。報告では、今回のCOP27でも日本が化石賞を受賞したことを受け、①日本の取り組みが炭素貯留など新技術に寄っていることは問題、再エネの最大化が優先されるべき、②1.5度目標がより重要視され、目標と整合するために今すぐ石炭火力発電を廃止しなくてはならないとの国際潮流の中で、わが国の石炭火力発電の維持政策には批判があり、化石燃料自体いらないとの声が大きい、③グリーンウォッシュ(みせかけの排出削減)による化石燃料の抜け道がないように野党が監視すべき、などの意見があった。さらに、現場での交渉、NGOおよびユースなど各セクターの会合での議論、非暴力直接行動等について話を聞いた。

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)統合報告書」が2023年3月に採択された。主執筆者のひとりである専門家から、AR6の主要な論点を聞いたところ、①世界の脱炭素化への転換は人類にとって、やらないと地球環境が酷いことになるだけでなく早くやる必要があり、そうすれば健康にも公平性にもプラスを生じさせること、②転換のために必要な資金も技術の大部分も人類は持っていること、③今すぐ急激にかじを切らないと実現不可能になることが挙げられた。その上で現状は、転換スピードも投資もまったく足りておらず、インフラや産業、社会システムが化石燃料文明の経路から抜け出せていないことや脱炭素化の敗者を生み出さないように配慮して進めなければいけないなどの課題が示された。さらに「日本ではリスク認知がされていないが、世界では違う。気候変動への対応は面倒やコストが係ることへの我慢や負担と捉えられることが多いが、皆が前向きに社会を変えていくチャンスであり、そういう発信が必要とされている」との指摘があった。

ネイチャー・ポジティブ実現に向けた課題

生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第2部が2022年12月に開催され、2030年までのミッションとして、生物多様性の保全および持続可能な利用などにより生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せる(ネイチャー・ポジティブ)ための緊急の行動をとることが定められた「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。しかし日本は、2010年に策定された生物多様性の損失を止めるための「愛知ターゲット」を完全には達成できておらず、資源の大量消費や土地利用変化による影響を受け、生物の絶滅速度はかつてない速さになっているなど深刻な報告が続いている。新枠組の目標に掲げられた陸と海の少なくとも30%以上を保全しようとする目標「30by30」の推進は重要であるが、例えば西表島では世界自然遺産登録の際に指摘された現地の脆弱な生物多様性の劣化・損失を防ぐためのオーバーツーリズム対策について、地域に任せきりとなっている。気候変動の解決策としても生物多様性の潜在能力が重要視されている中、ネイチャー・ポジティブ実現に向けた課題は山積している。

プラスチック資源循環の課題

また、プラスチックによる環境汚染に対しては近年注目が集まり、その環境影響に関する研究も進んでいる。一方国内では、2022年にプラスチック資源循環法が施行されたが分別収集・再商品化が自治体任せとなっており、事業者の使い捨てプラスチック削減の取り組みは商品提供時の声かけにとどまるなど、政府の目指す消費者のライフスタイル変革にはほど遠い状況である。

日本政府が2023年5月のG7サミットで、「2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロ」とすることに合意したことや、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)策定に向けた国際交渉に参加していることは一定評価できる。しかし、プラスチック廃棄物の分別回収費用の自治体への重い負担や、3Rで最も優先すべきプラスチック廃棄物の発生抑制対策は圧倒的に不足している。


立憲民主党は、これらのヒアリングや提案等を踏まえ国会で議論を行った。これからも環境政策の一層の推進に向け、取り組んでいく。