毎年9月に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2023
(第209回臨時国会、210回臨時国会、211回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

外務・安全保障

「外交・安全保障戦略の方向性」を示す

2022年末改定された安全保障3文書に基づき、防衛予算や自衛隊機能を急速に拡大しようとする政府に対し、外務・安全保障部門では他国の防衛政策や台湾海峡問題、サイバー・宇宙・ハイブリッド戦に関する有識者ヒアリング等を13回行い、丁寧に議論を重ねたうえで「外交・安全保障戦略の方向性」をまとめた。その中で、紛争を回避するための外交努力が最重要とし、中国との向き合い方が現下最大の外交課題との認識を示し、米中の緊張緩和に向けた努力および「ルールによる秩序形成」においてわが国が主要な役割を果たしていくとした。

同時に、周辺国の軍事力が急速に強化されてきていること等を踏まえ、防衛力強化は不可欠であるとした。防衛力の強化に当たっては、①ミサイル防衛能力、②宇宙、サイバー、電磁波、認知戦等を統合した作戦能力、③自衛隊の継戦能力、④自衛隊の人的基盤、⑤原発等、重要防護施設の防護、⑥海上保安庁の体制、連携を優先的に強化するとした。さらに、スタンドオフミサイル保有等のミサイル能力の向上は必要としたうえで、相手領域内への攻撃を含む反撃能力の保有・行使には、必要性と合理性、専守防衛の枠内という3つの要件が満たされなければならないことを確認した。そのうえで、わが国に対する攻撃が発生していない「存立危機事態」や「攻撃の着手段階」での反撃は行うべきでないとし、国会論戦に挑んだ。審議を通して政府は敵のミサイル攻撃の着手を正確に把握することが、技術の進展により困難であることを認めた。

5年で43兆円、防衛増税に反対

「数字ありき」で5年後にGDP比2%に倍増させようとしている防衛費について、政府に国会で説明責任を果たすよう迫ったが、政府は43兆円の積算根拠を示さないまま2023(令和5)年度予算を成立させた。また、防衛財源確保法案は43兆円確保のめどが立っておらず、増税ありきにもかかわらず政府は具体的な増税議論を先送りにしているとして廃案を迫ったが、政府は本法案を可決・成立させた。(詳細 第3章 43兆円規模の巨額防衛費・財源

中国の弾道ミサイル発射と日中正常化50周年

中国は2022年8月4日、ペロシ米国下院議長の訪台への対抗措置として、日本のEEZを含む台湾周辺で「重要軍事演習」を行い、9発のうち5発の弾道ミサイルを日本のEEZ内に落下させた。このような軍事的行動は断じて正当化されるものではなく、わが国の主権に対する挑戦でもあり、立憲民主党は厳重に抗議した。

一方で9月には、日中国交正常化50周年を迎え、習国家主席と岸田首相の双方で祝電が交わされた。しかし、日中間で安定した友好的な関係が構築されているとは言い難く、首相に早期の首脳会談の開催をくり返し求めた。

ウクライナ支援、米中韓を含む党外交推進

ウクライナの議員団が2022年10月に党本部を訪れ、意見交換を行い、立憲民主党として民生・復旧支援の継続等を約束した。訪日中の韓国の尹大統領とも面談し、関係改善に共に協力していくことを確認した。さらに米国、中国、インドの各大使や欧州議会の訪問を受ける等、党外交を推進した。

2022.10.18 ウクライナ国会議員団が表敬訪問
2022.10.18 ウクライナ国会議員団が表敬訪問
2023.2.22 駐日インド大使が表敬訪問
2023.2.22 駐日インド大使が表敬訪問

北朝鮮の弾道ミサイル・軍事衛星打ち上げ

北朝鮮はかつてない頻度でミサイルを発射し、2022年に59発、2023年は12発を発射した(6月現在)。中でも2022年10月に発射した弾道ミサイルは日本の上空を通過し、EEZ外の太平洋に落下した。また2023年5月には軍事偵察衛星を搭載したとするロケットを発射したが、打ち上げは失敗し、黄海上に落下した。立憲民主党は政府に対し、日韓関係改善と日米韓連携の強化とともに、北朝鮮のあらゆる変化をとらえて拉致問題解決も含めた話し合いの場を持つため、万全の外交努力を尽くすよう求めた。

防衛産業基盤強化法案に附帯決議

政府は211回通常国会に、防衛産業基盤強化法案を提出した。本法案は、任務に不可欠な装備品を製造する企業が行うサプライチェーン強靭化等の取り組みに対し、国が経費の直接支払いを行う措置や、国が製造施設等を保有し、企業に管理・運営させることを可能とする等の措置が含まれる。

これらの措置の必要性は認められるが、抜本的な基盤強化とは認められなかった。このため立憲民主党は、附帯決議を衆議院で付すことを提案し、与野党合意で採択されたため、本法案に賛成し、可決・成立した。附帯決議では、基盤強化に関する戦略の明確化を求め、調達の在り方の見直し、業界再編推進等の基盤強化に関する留意事項や取り組みを求めた。

経済安保推進法に関し政府へ申し入れ

2022年5月に成立した経済安保推進法に関して、立憲民主党は当時の附帯決議に基づき、211回通常国会で政府が策定を進める4分野の基本方針を聴取し、政府に提言を行った。基幹インフラの安全性確保と特許出願の非公開化に関する基本方針については担当大臣に申し入れを行った。また2022年9月には政府が改正5G促進法に基づき最大929億円もの助成を行うとした先端半導体工場等の視察を行った。

日豪・日英部隊間円滑化協定に賛成

外務・安全保障部門では210回臨時国会、211回通常国会合わせて6件の政府提出法案と12件の条約を審査、いずれも賛成し、法案は可決・成立、条約は承認された。中でも日豪、日英の部隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の法令順守義務、裁判権、部隊の地位等を定めた部隊間協力円滑化協定および実施法案の審議では、協定により、インド太平洋地域の平和と安定およびわが国の安全保障に資するとし、立憲民主党は賛成した。

拉致被害者家族や支援者と面談

党拉致問題対策本部は「家族会」の代表と事務局次長である横田めぐみさんの兄弟および「救う会」会長から、2023年2月に両会がまとめた 「運動方針」などについて説明を受けた。また、特定失踪者の家族会の事務局長および支援団体の代表から、2月に両団体合同で発表した総理と特定失踪者家族の面会実現を求める等のアピールについて説明を受けた。立憲民主党は各団体と意見交換を行い、親世代が存命のうちの、一刻も早い拉致問題の解決に党全体で取り組んでいくことを確認した。