毎年9月に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2023
(第209回臨時国会、210回臨時国会、211回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

厚生労働

国民本位の新型コロナ対策を主導

政府は210回臨時国会に、感染症の発生・まん延時における体制整備等を盛り込んだ「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案」(感染症法等改正案)を提出した。立憲民主党は不十分な点を補うため、議員立法「国民本位の新たな感染症対策を樹立するための感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び予防接種法の一部を改正する法律案」(国民本位の新たな感染症対策樹立法案)、「新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案」(日本版EUA法案)を衆議院に提出した。立憲民主党は2法案の内容を踏まえて政府案への修正案を提案し、与党の合意を得て、政府案は衆議院で修正された。立憲民主党は政府案に賛成し、政府案は可決・成立した。国民本位の新たな感染症対策樹立法案は審査未了、日本版EUA法案は継続審議となった。(詳細 第3章 感染症法等改正案

また、新型コロナの重大な課題である後遺症とワクチン健康被害への対策を強力に推進するため、211回通常国会で議員立法「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に係る対策の推進に関する法律案」(コロナ後遺症対策推進法案)、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種による健康被害の救済等に係る措置に関する法律案」(コロナワクチン健康被害救済法案)を衆議院に提出した。2法案は継続審議となった。(詳細 第3章 5類後のコロナ対策

2023.6.14 コロナ後遺症対策推進法案、コロナワクチン健康被害救済法案を衆議院に提出
2023.6.14 コロナ後遺症対策推進法案、コロナワクチン健康被害救済法案を衆議院に提出

政府の感染症対策関連の法案の問題を指摘

岸田首相が「日本版CDC」を創設すると表明したことを受け、政府は211回通常国会に「国立健康危機管理研究機構法案」「国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」を提出した。しかし、本法案で創設する機構は、米国CDCと比べて人員や予算等の面で見劣りし、「日本版CDC」と呼べる組織ではなかった。また、本法案が成立したとしても感染症対策で重要な役割を担う地方衛生研究所等の法的根拠は曖昧なままで、その体制強化が期待できないという問題もあった。そのため、立憲民主党は2法案に反対したが、2法案は可決・成立した。

政府は210回臨時国会に「新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案」を提出したが、継続審議となった。関係団体から、本法案の感染症に関する宿泊拒否の規定が感染症の患者等に対する偏見差別を助長するといった強い懸念が示されていた。これを踏まえ、211回通常国会で与野党間の協議により、感染防止対策への協力の求めを受けた者が正当な理由なく応じない場合に宿泊拒否を可能とすることを削除すること、生活衛生関係営業等の事業譲渡の規制緩和について事業承継後の調査を都道府県に義務付ける経過措置を追加すること等の法案修正が行われることとなった。立憲民主党は法案の修正を踏まえて賛成するとともに、附帯決議を付した。法案は可決・成立した。

健康保険証の存続を強く要請

健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化する政府方針に対して、厚生労働部門は2022年11月、総務、内閣部門とともに、健康保険証を存続させるべきであるとの見解を取りまとめた。その後、様々なトラブルが明らかになったため、2023年6月、厚生労働省に対してシステムの総点検と健康保険証の存続を求める申し入れを行った。(詳細 第3章 マイナンバー問題

2023.6.9 健康保険証の存続を厚生労働省に申し入れ
2023.6.9 健康保険証の存続を厚生労働省に申し入れ

安心して働き生活できる環境の確立を目指す

正規雇用と非正規雇用の待遇格差に関する制度の不備を改めるため、立憲民主党は211回通常国会で議員立法「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部を改正する法律案」(非正規雇用処遇改善法案)を衆議院に提出した。内容は、合理的と認められない待遇の相違の禁止、待遇に関する事業主の説明責任の強化等である。法案は継続審議となった。

また、厚生労働部門と文部科学部門が共同で2023年3月、「もっと良い学びなおしビジョン」を取りまとめた。(詳細 第3章 「もっと良い学びなおしビジョン」)さらに、雇用問題対策プロジェクトチーム、最低賃金アップ問題ワーキングチームが、有識者や関係団体からのヒアリングを積極的に行った。

名ばかりの全世代対応型社会保障法案に反対

政府は211回通常国会に「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」を提出した。本法案は、社会保障の根本的な問題に手を付けず、かかりつけ医機能の法整備も、今と何が変わるのか分からない不十分なものであった。また出産育児一時金の費用の一部を後期高齢者医療制度が支援する仕組みの導入も、政府が法案審議中に出産費用への保険適用の導入検討の方針を示したことから、出産費用に対する政府の方針が不明確になった。そこで、立憲民主党は出産に関する支援の在り方や、かかりつけ医制度化について、政府の検討を促す修正案を与党に提示したが、与党が受け入れなかったため、立憲民主党は政府案に反対した。政府案は可決・成立した。

水と食品の安全・安心を守り続けるために

政府は211回通常国会に、厚労省の水道整備・管理行政を国土交通省と環境省に、食品衛生基準行政を消費者庁に移管する「生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案」を提出した。水道整備・管理行政の移管後も予算や人員が十分に確保されるのかどうか等の懸念があるものの、移管については一定の合理性があるため、立憲民主党は懸念を解消すべく附帯決議を付した上で法案に賛成した。法案は可決・成立した。

ゲノム医療、認知症施策等を推進

立憲民主党が推進した議員立法「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案」「共生社会の実現を推進するための認知症基本法案」が211回通常国会で衆議院厚生労働委員長提案により可決・成立した。2法案はゲノム医療、認知症施策に関し、それぞれ基本理念、基本的施策等を規定するものである。

また、立憲民主党は2023年5月、医薬品の供給が不安定な状況が続いていることを踏まえ、「医薬品の安定供給実現のための提言」を厚生労働大臣に申し入れた。