第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応
内閣
「能動的サイバー防御法案」を修正
政府は217回通常国会に「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案」(サイバー対処能力強化法案)、「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」(サイバー対処能力強化法整備法案)を提出した。
これらの法案については、憲法が保障する通信の秘密を侵害するおそれ等の懸念が指摘されたことから、立憲民主党は懸念を払拭するための修正案を取りまとめ、修正された法案に賛成した。2法案は可決・成立した。(詳細 能動的サイバー防御法修正)
AI推進法案に賛成
多くの国民がAIに対し不安を抱き、日本におけるAI開発・活用は遅れている。政府は、AIの開発・活用を促進しつつ、リスクに対応するとして、217回通常国会に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」(AI推進法案)を提出した。
法案は、開発・活用を促進するための仕組みを定める一方で、AIの開発・利用を人間中心とする原則や、児童ポルノを含むディープフェイクポルノへの対策が明記されていない等、リスクへの対応に不十分な点がみられた。立憲民主党は、これらの点等について附帯決議を付し、法案に賛成した。法案は可決・成立した。
新たな日本学術会議法案に反対
政府は217回通常国会に新たな「日本学術会議法案」を提出した。立憲民主党は、ナショナルアカデミーの自律性・独立性が毀損されるおそれがあるとして法案に反対し、参議院に修正案を提出した。修正案は否決され、法案は可決・成立した。(詳細 日本学術会議法案に対する修正案)
男女共同参画機構法案に賛成
政府は217回通常国会に「独立行政法人男女共同参画機構法案」「独立行政法人男女共同参画機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」を提出した。この法案は、(独法)国立女性教育会館(ヌエック)を解散し、本部は埼玉県に置いたまま新たな独法を設立して本部機能を強化し、研修棟などの施設は廃止することとして、これらの施設で実施されていた対面での交流は全国で行う仕組みを定めるものである。
立憲民主党は、本部施設の縮小が全国の男女共同参画センターの縮小につながらないことを確認するとともに、全国のセンターに対しその機能を充実させるための支援を行うこと等を求める附帯決議を付し、法案に賛成した。法案は可決・成立した。
悪質ホストクラブ等規制の風営法改正法案に賛成
政府は217回通常国会に「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」(風営法改正法案)を提出した。本法案は、ホストクラブ等が利用客に高額な「売掛金」などの債務を負わせ、売春などの性搾取により返済させる等の「悪質ホストクラブ問題」を背景として、①売掛金等の蓄積の防止策、②売掛金等の悪質な取り立ての防止策、③売春等へのあっせんへの対応、④悪質な業者の処罰や排除、などを定めるものである。
立憲民主党は、悪質ホストクラブ問題について、2023年の212回臨時国会、2024年の213回通常国会にそれぞれ議員立法を提出するなど先駆的に取り組み、問題への匿名流動型犯罪集団(トクリュウ)の関与が指摘されていることも踏まえ、政府に対策を求めてきた。本法案は、立憲民主党が求めてきた対策の趣旨も盛り込まれているほか、悪質ホストクラブなどの「ビジネスモデル」を構成する各行為の規制を定める等、被害防止に役立つ内容であることから、立憲民主党は法案に賛成し、法案は可決・成立した。
オンラインカジノ問題の対策強化を推進
海外では適法でも日本では違法な賭博であるオンラインカジノの国内経験者数が300万人を超え、その約6割に依存症の自覚があると推計されるなど、深刻な状況が生じている。警察庁の調査では、経験者の約4割がオンラインカジノの違法性を認識していなかった。
こうした課題に対応するため、立憲民主党は「オンラインカジノ問題対策プロジェクトチーム」を設置し、オンラインカジノ利用の違法性周知の徹底と、オンラインカジノに関する情報の発信行為の禁止等の措置を講ずる議員立法の検討を開始した。与党でも議員立法の検討が行われ、超党派の実務者協議を経て、217回通常国会に議員立法「ギャンブル等依存症対策基本法の一部を改正する法律案」が提出され、立憲民主党は法案に賛成し、法案は可決・成立した。
オンラインカジノ問題について必要な対策のうち、サイトブロッキング(サイトへのアクセスの遮断)の議論を丁寧かつ速やかに進めることや、賭け金等の決済代行業者に対する取締りを徹底すること等の対策については、議員立法に盛り込まれなかったことから、別途提言を取りまとめ、政府へ提出した。

安定的な皇位継承に向けた取り組み
立憲民主党は、安定的な皇位継承を確保するための方策について、衆参両院正副議長の主催する全体会議において、党の「論点整理」に基づき真摯に議論に臨んできた。全体会議は2024年の総選挙後4回開かれ、①「女性皇族が婚姻後も皇族として残る案における配偶者・子の身分」について、②「皇統に属する男系男子を養子とする案」についての2つの論点を中心に議論が進められた。
立憲民主党は前者については、身分を付与する案と身分を付与しない案の両案の長所と短所を指摘し、両案を検討すべきとする姿勢で臨んだ。後者については、対象者の調査と意思確認の必要性、先例主義との整合性、憲法学者から提起された憲法上の疑義、事実上の不都合など課題が多いことを指摘した上で、対象者と時期・親などについての意見徴求には、旧11宮家に限り、時期・親等も限定すべきと表明した。
217回通常国会においては立法府の総意の取りまとめに至らなかった。立憲民主党は「熟議と公開」の原則のもと、今後も立法府としての責任を果たすべく、与野党協議を通じた合意形成に尽力していく。