第3章焦点となった法案・課題への対応
賃上げ機運と着実な価格転嫁を支える修正を提案下請法等改正案
政府は217回通常国会に「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」を提出した。近年の急激な労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を受けて、発注者と受注者の対等な関係に基づいてサプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現が求められていた。このため本法案により、協議を適切に行わない代金額の決定の禁止、手形による代金の支払等の禁止、運送委託の対象取引への追加等の措置を講ずるとともに、多段階の取引当事者が連携した取り組み等を支援するほか、「下請」等の用語を見直し、下請法の法律名を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に改めることとしている。
施行日明確化で法律の効力の予見性向上へ
立憲民主党は本法案の改正の意義については十分理解できたが、施行日が一部の規定を除き公布後1年以内の政令で定める日となっていることが議論の焦点となった。関係団体からのヒアリングでは2026年春闘の時期での法律の実効性の確保が必要であるとの意見があったほか、米国トランプ政権による関税措置が国内産業の成長マインドに水を差しかねない環境にある中で、賃上げ機運と着実な価格転嫁の実行を支える必要があると判断した。
このため立憲民主党は、法律改正に関する情報の周知・徹底の期間にも配意しつつ、改正法の効力の予見性を高める観点から、施行日を「令和8年1月1日」と明確にする修正を提案し、与野党が合意した。その結果、本法案は修正議決し成立した。