毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2025
(第214回臨時国会・第215回特別国会・第216回臨時国会・第217回通常国会の総括)

第3章焦点となった法案・課題への対応

厚生年金等底上げのための法案修正実現年金改革法案

「年金3割カット」を放置する与党

政府は2024年7月、5年に1度行われる年金の財政検証の結果を公表した。「過去30年投影ケース」では、基礎年金の調整が終了する2057年に所得代替率が約3割減少するとの結果が示された。この状況を放置すれば、多くの現役世代と若者が老後に貧困に陥ることが危惧される。この財政検証を受けて行われる年金制度の法改正の焦点は、厚生年金等の底上げであった。

法改正について検討する厚生労働省の社会保障審議会年金部会の「議論の整理」では、底上げのために、今後の経済が好調に推移しない場合に発動されうる備えとして、所得代替率減少の要因となっているマクロ経済スライドを早期に終了させることについて「さらに検討を深めるべきである」とされ、厚労省は自民党に当該措置を含めた案を示した。これに対して自民党は、法改正の直後に行われる参議院選挙で、当該措置のデメリットを指摘されたり、誤った理解が広まったりして、自らが不利になることを懸念して、底上げを含めて法案の扱いについて結論を出せず、政府は提出の期限を過ぎても法案を提出できなかった。

立憲民主党は政府・与党に対して法案提出を粘り強く要求し、政府は提出期限から2カ月遅れでようやく「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」を217回通常国会に提出した。しかし、肝心の底上げ措置が取り除かれ、政府案の内容は被用者保険の適用拡大、在職老齢年金制度や遺族年金の見直し等のみで、「あんこのないあんパン」と言わざるを得なかった。

立憲民主党が法案の修正を強く要求

政府・与党の対応は将来への責任を放棄するものであった。立憲民主党はこの国会での法改正の機会を逃すと永遠に厚生年金等の底上げは実現できないとの危機意識のもと、底上げのための措置を盛り込む修正案を取りまとめた。修正案の内容は、①次期財政検証において将来の老齢基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、老齢基礎年金の給付水準の向上を図るため、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドによる調整を同時に終了させるために必要な法制上の措置を講ずる、②①の措置によって一部の高齢者の年金受給額が一時的に減ることについて、その影響を緩和するための措置を講ずることである。

立憲民主党は与党に対して、この修正を強く要求し、与党の合意を得た。

「年金3割カット防止」の修正を実現

立憲民主党は、与党と修正に合意したため、政府案に賛成した。政府案は衆議院で修正された上で、可決・成立した。修正内容を実行すれば、基礎年金のマクロ経済スライドが早期に終了し、それ以降は、物価が上がれば同じだけ年金が増える本来の年金に戻る。その結果、若い世代ほど、生涯でもらえる厚生年金等の合計額が増え、改正前に比べて数十万円から数百万円単位で増えることになる。

一方で、政府の法案提出が遅れたことにより、十分な協議ができず、年金制度に関する様々な課題が残ることになった。そのため野田代表は、修正に合意した党首会談で石破首相等に対して、今回の改革は一里塚でさらなる改革が必要であるため、年金に関する協議の場の設置を要請した。