第3章焦点となった法案・課題への対応
個人の尊重と男女の対等な関係の構築を選択的夫婦別姓法案
選択的夫婦別姓実現本部を立ち上げ
現行の民法では、夫婦同姓が義務付けられており、改姓による不利益や、アイデンティティの喪失といった問題が指摘されてきた。法制審議会は1996年に選択的夫婦別姓制度の導入を提言したが、国会での議論は全く進んでいなかった。また、最高裁は2015年と2021年、夫婦同姓規定に合憲判断を示したが、夫婦別姓制度を採用するかどうかは立法府の裁量であり、夫婦の姓の在り方は国会で論じられ判断されるべき、とした。
そこで、立憲民主党は選択的夫婦別姓を早期に実現すべく、2025年2月に選択的夫婦別姓実現本部を立ち上げた。そして、当事者団体、弁護士団体、経済団体、選択的夫婦別姓訴訟弁護団、税理士団体、憲法学者、民法学者、関係省庁などから精力的にヒアリングを重ねた。
選択的夫婦別姓法案を提出
立憲民主党は、「民法の一部を改正する法律案」(選択的夫婦別姓法案)を217回通常国会に提出した。本法案は、個人の尊重と男女の対等な関係の構築等の観点から、夫婦の氏を統一するか各自婚姻前の氏を使用するか選択できるようにするものである。
2022年に野党4党と共同で提出して廃案となった選択的夫婦別姓法案では、子の氏を決めるタイミングを子の出生時ごととしており、兄弟姉妹間の氏が異なる可能性も認めるものであった。これは、子を持たない夫婦への配慮や、夫婦双方の氏を後世に残したい人等へのニーズに応えるためである。一方、本法案では法制審議会答申案に合わせて婚姻時に決めることとし、兄弟姉妹間の氏は統一される。また、施行期日について、2022年に提出した選択的夫婦別姓法案や法制審議会答申案では1年以内であったが、関係省庁からのヒアリングを通して、システム改修等には3年程度かかるということが明らかとなり、より現実的な法案とするため、本法案では施行期日を3年以内とした。なお、戸籍については、現行通りに夫婦および子を単位として編成した上で、現在は名のみが記載されているところに各自の氏も記載する法制審議会答申案の記載方法を想定している。
衆議院法務委員会審議入りも、採決には至らず
立憲民主党が選択的夫婦別姓法案を提出したのに続いて、日本維新の会は、夫婦同姓の原則を維持した上で、戸籍法を改正して旧姓の通称使用を法制化する「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」、国民民主党は、選択的夫婦別姓制度を導入する「民法の一部を改正する法律案」を提出し、立憲案も含めた3案が同時に217回通常国会の衆議院法務委員会で審議入りをした。国民案は、立憲案と酷似しているが、立憲案が父母の婚姻時に「子が称する氏」として父又は母の氏を定めるのに対し、国民案は父母の婚姻時に定めた「戸籍筆頭者」の氏が子の氏になる点などで微妙に異なる。
28年ぶりに選択的夫婦別姓法案が審議入りしたが、会期内に結論を得ることができず、継続審議となった。立憲民主党は、一刻も早い選択的夫婦別姓制度の実現を目指して、これからも活動を続けていく。