第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応
国土交通
217回通常国会において、国土交通部門は、公共インフラの安全確保、輸送・物流政策の健全化、地域の課題解決に向け、政府提出法案等への対応、議員立法の提出、様々な不祥事対応、老朽化インフラ対策などに幅広く取り組んだ。
また、沖縄・北方対策では、予算や政策についてヒアリングを実施し、今後の政策立案につなげていくことを確認した。
政府提出法案等への対応
国民の安全と現場重視の法改正に附帯決議と修正で実効性確保
217回通常国会において、国土交通部門は、関係団体の意見も丁寧に聴取しつつ、政府提出法案等に対して慎重な審査を行い、以下のように対応した。
まず、「道路法等の一部を改正する法律案」、「港湾法等の一部を改正する法律案」、「船員法等の一部を改正する法律案」、「航空法等の一部を改正する法律案」については、制度改正の必要性や実務への影響を精査した上でいずれも附帯決議を付した上で賛成し、4法案はすべて可決・成立した。
また、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案」については、マンションの共有部分の損害賠償請求について、政府案と実務的対応だけでは解決できない問題の検討を政府に義務付ける修正案を提出し、与党の賛同も取り付け、附帯決議を付した上で賛成した。その結果、本法案は修正議決の上、可決・成立した。
日本空港ビルデングの子会社が、元自民党議員の長男が経営する企業に対し不透明な業務委託を行っていた事案が発覚した。航空法等改正案の審議の際、国土交通省に説明責任を強く求め、再発防止策の徹底と業界のガバナンス強化を厳しく指摘した。
引き続き、国民の安全と安心、現場の実情に即した制度設計を重視し、実効性ある立法・行政監視を推進していく。
議員立法の提出と審議
安全・安心と現場重視の法改正
217回通常国会では、議員立法として、「半島振興法の一部を改正する法律案」、「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」および「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律案」を超党派で提出し、3法案は可決・成立した。
半島振興法の改正にあたっては、党として提案した良好な景観の保全、防災対策の推進、医療・介護の支援強化、地域公共交通の支援、再生可能エネルギーの推進などが盛り込まれ、地域の声を反映した内容となった。現場の実態や地域の課題を踏まえた制度改善が確実に進むよう、引き続き取り組んでいく。
貨物自動車運送関連2法案は、ドライバー不足と物流の持続可能性に対応するため、許可更新制の導入や適正原価の設定、処遇改善の義務化、多重委託の是正、無許可営業の規制強化などを盛り込んだ。国主導で体制整備を進める枠組みも新たに設けられた。
また「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法の一部を改正する法律案」については、策定に先立ち、国土交通部門として現地調査を実施した。成田市長や影響地域の住民からの聞き取りを通じて、現行法に明記されていないことが対応の障壁となっている実情を確認し、必要な措置を法律上に明記する意義を訴えた。立憲民主党は同法案を2025年6月に衆議院へ提出したが、現在は継続審議となっている。今後も、立憲民主党は関係自治体や住民の声を踏まえた丁寧な議論を継続する。
日本郵便における点呼業務不備事案への対応
217回通常国会では、日本郵便における点呼業務不備事案の発生を受け、同社のほか、総務省および国土交通省からヒアリングを実施した。点呼業務という基本的な安全管理の不履行を重く受け止め、国土交通省が日本郵便に対して一般貨物自動車運送事業の許可を取り消す方針を通知するに至った経緯を確認し、今後、制度運用や監督行政の在り方について議論を行っていく。
公共インフラ老朽化・国土強靱化対策の推進
2025年1月に埼玉県八潮市で発生した下水道管の破損による大規模な道路陥没事故を受け、立憲民主党は道路陥没事故対策ワーキングチームを設置し取り組みを進めたが、その後体制を強化し公共インフラ老朽化・国土強靱化対策検討プロジェクトチームに改組し、地方自治体が抱えるインフラ管理の困難や、全国的に進行するインフラ老朽化への抜本的対策を求める政策検討を進めた。PTでは関係団体や有識者からのヒアリングを重ねた。更新ルールの明確化や人口減少時代を見据えた必要性や代替案の検証などについても、より積極的に推進すべきであり、単純更新ではなく廃止や縮小・代替措置など多様な方策の検討、特に上下水道について、インフラの予防保全型管理の導入、共同溝での更新や更新の際の最適な材質の選択、下水道から合併浄化槽等への転換の検討、地方自治体で深刻さを増している技術系人材の継続的確保、自治体への財政支援の強化、適正な料金徴収、脱炭素化の推進などを盛り込んだ「要請書」を取りまとめ、6月に総務大臣および国土交通副大臣に対して手交を行った。
離島政策の推進
離島政策については、党の島政策プロジェクトチームが2024年6月に「立憲民主党の島政策(中間報告)」を取りまとめ、①国土の連続性の確保(離島航路・離島航空路の低料金化)、②物価格差の是正、③生業・生活の利便性向上、④医療体制の確保、⑤教育環境の確保という5つの柱を提示し、2025年6月には関連する「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法の一部を改正する法律案」(国境離島みんながJR運賃並法案)を衆議院に再提出した。
このように217回通常国会では、国民生活に直結するインフラ・交通政策の課題に対して、現場の声を踏まえた立法・政策提言を行うとともに、行政の説明責任や制度の実効性確保にも取り組んだ。今後も、安心・安全で持続可能な社会を支える政策の実現に向けて、国土交通部門として全力を尽くす。