毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2025
(第214回臨時国会・第215回特別国会・第216回臨時国会・第217回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

予算・決算・行政監視

憲政史上初の補正予算修正を実現

2024年1月に発災した能登半島地震とその後の豪雨は、能登地域の暮らしと生業に壊滅的な被害をもたらしたが、政府は予備費の支出を繰り返すばかりで、被災地では先の見通しが立たず、希望が失われていた。また、原材料価格の高騰や円安の進行により、依然として物価が上昇を続ける中で、わが国の雇用の約7割を占める中小企業では賃上げが十分に進んでおらず、所得が低いほど物価高による負担増の影響が大きくなるという傾向が顕著となっていた。

こうした状況を受けて、立憲民主党は11月7日、「能登復興・物価高克服のための緊急総合対策」(総額7.4兆円規模)を策定・公表した。本対策は、「被災者生活再建支援金」の実質倍増、公費解体の対象拡大などの能登復興支援策に加えて、消費税の実質的な還付による「物価高手当」の給付、社会保険の「130万円のガケ」で手取りが減らないように給付で埋める「就労促進支援給付」、コメの値上がりを受けて価格転嫁が困難となっている小売業者・飲食店等への支援、「中小企業等 電気・ガス補助金」の直接給付など、家計・事業者への直接的・集中的支援で賃金・所得の底上げを図るものとなっており、年度内、当面5カ月間を対象として、緊急の総合対策を提言するものであった。

政府は11月22日に「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を閣議決定し、同対策に基づき、216回臨時国会に2024(令和6)年度補正予算を提出した。しかし、その内容は、能登復興支援について被災地が求める対策の多くがこぼれ落ちていたほか、財政法第29条が求める緊要性の要件を欠く支出が多数見受けられ、約13.9兆円と過大な規模となっていることなど、数多くの問題点が存在していた。

こうした認識の下、立憲民主党は12月11日、①一般会計予備費残高のうち1000億円の使途を能登地域の復旧・復興に限定すること、②今回の補正予算による基金への支出のうち、積み過ぎと考えられる支出(約1.36兆円)を削減することを内容とする補正予算の修正案を提出した。同修正案は衆議院予算委員会において政府案と並行審議されることになった。結果として、与党は①の修正を受け入れ、この部分のみを与党の修正案として提出した。立憲民主党は、同修正案に賛成するとともに、補正予算自体については数多くの課題が残されていることから反対したが、与党等の賛成により、2024年度補正予算は修正の上、成立した。予算の修正自体28年ぶりであったが、補正予算の修正は憲政史上初の出来事であり、「熟議と公開」を旨とした新たな国会の実現に向けて、歴史的な一歩が刻まれることとなった。

2024.12.12 立憲民主党の2024年度補正予算修正案を衆議院予算委員会で並行審議
2024.12.12 立憲民主党の2024年度補正予算修正案を衆議院予算委員会で並行審議

「本気の歳出改革」の成果で当初予算修正を迫る

政府は2024年12月27日、2025(令和7)年度当初予算を閣議決定した。一般会計総額は過去最高の115.5兆円に上ったものの、依然として続く物価高に苦しむ家計を支えるための予算は十分に確保されていなかった。

こうした状況に鑑み、立憲民主党は2025年2月14日、国民の負担を減らし、収入を増やす「家計が第一」の予算修正案(総額3.8兆円規模)を策定・公表した。本修正案は、党内に設置した「本気の歳出改革」作業チームにおける検討を踏まえ、衆議院予算委員会の「省庁別審査」で明らかにした、「積み過ぎ」基金などの「ムダな予算」を削減し、その予算をガソリン・軽油の暫定税率廃止や高校無償化の拡充、学校給食無償化、エッセンシャルワーカーの処遇改善、高額療養費の自己負担限度額引き上げの凍結等の生活応援策に振り向けるものであった。(詳細p.33)立憲民主党は、本修正案の内容を予算に反映させるため、与党と3回にわたり協議を実施するとともに、2月28日には衆議院予算委員会に同修正案を提出し、政府案等との並行審議の中で実現を迫ったが、与党はこれを一切受け入れず、本修正案は否決された。

こうした状況を踏まえて、立憲民主党は2025年度当初予算に反対したが、与党は日本維新の会との間で高校無償化や学校給食無償化等を内容とする予算修正で合意し、同修正を反映の上、衆議院で予算を可決させた。

審議の舞台が参議院に移ってからわずか数日後の3月7日、政府は、高額療養費の自己負担限度額引き上げを見送る方針を表明した。これは患者団体等の切実な要望を受けて、立憲民主党が修正案で実現を求めてきたものであり、「熟議の国会」の成果であった。その結果、2025年度当初予算は、参議院において再修正されることになり、異例ずくめの展開の後、年度末の3月31日に成立することとなった。衆参両院で修正された予算の成立は、現行憲法下で初めての出来事であった。

2025.2.14 2025年度当初予算修正に向けて与党との実務者協議に臨む
2025.2.14 2025年度当初予算修正に向けて与党との実務者協議に臨む

2023年度予備費の濫用・乱発を喝破

217回通常国会では2023(令和5)年度予備費等4件が審議された。このうち、一般予備費等については、2024年1月発災の「令和6年能登半島地震」への対応に係る支出が主たる内容であり、個別の具体的な施策については必要なものも認められたが、発災直後の支出はともかくとしても、本来であれば速やかに補正予算を編成して対応するのが筋であり、予備費の濫用・乱発による対応は財政民主主義の観点から容認し難いものであった。

こうした理由から、立憲民主党は予備費3件に反対した。なお、特別会計経費増額総調書等1件については、いわゆる「弾力条項」に基づき、地方譲与税譲与金の増額等を行う自動的な措置であることから賛成とした。いずれも5月28日、与党等の賛成により承諾された。

2023年度決算等に反対、内閣に対して警告

参議院では216回臨時国会、217回通常国会で2023(令和5)年度決算等が審議された。2023年度決算については、翌年度への繰越額が11.1兆円、不用額が6.9兆円と異常な規模になっていること、会計検査院が不適切な支出として指摘した事項が345件、額にして648億円余りに及んでいることなどを踏まえると、依然として正常な予算執行とは言えない状況にあった。

その他にも、予算・決算審議において様々な問題点が明らかにされてきたことを踏まえ、立憲民主党は2023年度決算並びに国有財産増減等計算書に反対した上で、内閣に対する警告決議、措置要求決議、会計検査院への検査要請を取りまとめ、賛成した。なお、国有財産無償貸付状況総計算書は、住民生活に資する国有財産を地方公共団体等に無償で貸し付けるものであることから賛成とした。措置要求決議、検査要請は6月9日の決算委員会で決議・要請され、その他は6月11日の本会議で是認・警告された。