毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2025
(第214回臨時国会・第215回特別国会・第216回臨時国会・第217回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

外務・安全保障

ロシアによるウクライナ侵略は4年目に突入した。イスラエル・パレスチナ紛争も長期化し、ガザが深刻な人道危機に陥り、戦火も周辺に拡大するなど、国際情勢は厳しい。また、アメリカではトランプ大統領が2025年1月に就任し、トランプ大統領は4月に日本に対して、24%の「相互関税」や自動車への25%の追加関税を発表した。

こうした国際情勢の中、外交・安全保障戦略プロジェクトチーム、外務部門、安全保障部門は、日米関係、米欧関係などに関する有識者からヒアリングを実施し、党の外交・安全保障政策のアップデートを行った。またアメリカとの関税交渉を注視し、国内対策を検討するため「日米通商問題対策本部」を設置した。(詳細 トランプ関税対策

216回臨時国会、217回通常国会あわせて、外務省から1件の法案と13件の条約、防衛省から3件の法案が提出され、法案はすべて可決・成立、条約はすべて承認された。外務・安保部門の合同会議で案件を審査し、日・伊物品役務相互提供協定(日伊ACSA)を除いて賛成した。

217回通常国会で政府が提出したサイバー対処能力強化法案および同整備法案に対しては、外交・安保戦略PTと外務・安保をはじめ関係部門とともに審査に臨み、修正の上、附帯決議を付して賛成、両法案は可決・成立した。(詳細 能動的サイバー防御法修正

数字ありきの防衛費と防衛増税に反対

政府は2025(令和7)年度予算に、数字ありきの過去最大の8兆4748億円を計上した。その財源としての法人税とたばこ税の増税を含む税制改正法案も合わせて提出された。一方で、所得税の増税については再び結論が先送りされた。立憲民主党は防衛増税は行わないとの方針のもと税制改正法案に反対した。(詳細 財務金融・税制・経済財政

防衛省・自衛隊で相次いだ不祥事を追及

2024年7月に防衛省は特定秘密漏洩に該当する違法な運用、潜水手当の不正受給などで延べ220名を処分し、さらに海上幕僚長が引責辞任した。また、川崎重工が架空取引で捻出した裏金で海上自衛隊の潜水艦乗組員を接待した事案も明らかになった。こうした不祥事は、防衛省への国民の信頼を大きく失墜させる事態である。立憲民主党はヒアリングを行い、潜水手当の不正受給による逮捕者の存在が初めて明らかとなった。逮捕者の存在が国会と防衛大臣に未報告だったのは、文民統制上の重大な問題であった。2025年2月には、これら不祥事に関する特別防衛監察の中間報告のヒアリングを行い、政府には早期の実態解明および再発防止策の徹底を求めた。

米軍構成員等による性的暴行事件の再発防止と日米合意に基づく迅速な通報を求める

沖縄で米軍の空軍兵が16歳未満の少女に性的暴行を加えたとして起訴されていたことが2024年6月末の報道により発覚した。この事件では、1997年の事件・事故に関する通報制度に関する日米合意に反し、外務省は防衛省や沖縄県に通報せず、在日米軍も同様に沖縄防衛当局に通報していなかった。外務・安保部門の合同会議において、外務省は日米間の情報共有に問題はなかったとし、被害者のプライバシー保護を理由に、通報をしなかったと答弁したが、立憲民主党は政府に対して、被害者保護と再発防止のため地元自治体への迅速な情報共有を徹底するよう求めた。これらを受け、政府は捜査当局が対外的に未発表の在日米軍の性暴力事件の情報も県側と共有する運用に改めた。

ACSA・RAAの共通化規定をただす

政府は217回通常国会で防衛省設置法案等一部改正案およびRAA(円滑化協定)実施法案を提出した。両法案は、それぞれACSA(物品役務相互提供協定)およびRAAの国内実施法を共通規定化するものであった。今後、新たな国とACSAやRAAが締結されても国内実施法について国会での議論を経ないことになるため、衆議院では、ACSAやRAAの締結の際に政府が安全保障委員会に報告し、意見を求める旨の附帯決議、参議院では、外交防衛委員会に報告する旨の附帯決議をそれぞれ付して法案に賛成し、両法案は可決・成立した。

日・伊物品役務相互提供協定(日伊ACSA)への対応

政府は217回通常国会で日伊ACSAの国会承認を求めた。安全保障分野の共同訓練の実施、人道支援などを通じて、イタリアとの関係を促進する意義はある。また、質疑を通じ、外務省は存立危機事態の協力について、日伊間で具体的に協議していないと答弁し、防衛省からは日伊間で存立危機事態における行動を前提とした訓練や協力について現時点で決まった計画や協議を行う予定もないとの回答もあった。しかし、条文解釈上は存立危機事態等を含むと政府が答弁したことを問題視する意見が党内であり、議論の末これまでのACSAと同様に反対したが、与党等の賛成で承認された。

中東・ウクライナ情勢への対応

2025年6月12日に、イスラエルはイランの核・軍事施設等への攻撃を行った。立憲民主党は外交・安保戦略PT会長およびネクスト外務大臣よりイスラエル、イラン双方に対し自制を求め、アメリカにもイスラエルに自制するよう働きかけることを求めるコメントを発出した。しかし、6月22日に、アメリカが国連安保理における議論もないままイランの核施設に直接攻撃する事態に至ったため、再度コメントを発出し、アメリカの武力行使に対する深刻な憂慮を示すとともにさらなる介入の自制を求め、イスラエル・イラン双方に恒久的な停戦に向けての行動、すべての国に不拡散条約の尊重と国際法に従うこと、さらに、日本政府には、関係各国間の対話の実現に向け積極的役割を果たすことなどを求めた。

また、2025年2月には、ロシアのウクライナ侵攻開始から3年に際してネクスト外務大臣よりコメントを発表した。ロシアの侵略行為を改めて強く非難し、停戦交渉は国際規範に照らして国際社会にも納得感のあるものであるべきとし、また、ウクライナの人々が安心して生活ができるようあらゆる努力を続けるとした。

拉致被害者家族、団体からヒアリング

党拉致問題対策本部は、2024年12月に「家族会」「救う会」「特定失踪者家族会」「特定失踪者問題調査会」の4団体から、最近の活動報告や、北朝鮮向けラジオ放送「しおかぜ」の二重放送の放送時間が大幅に変更される問題などについてヒアリングを行った。親世代が存命のうちの、一刻も早い拉致問題解決への決意を共有し、改めて全力で取り組むことを約束した。