第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応
厚生労働
現役世代・若者の厚生年金等底上げの修正を実現
政府が217回通常国会に提出した「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」には、焦点だった厚生年金等の底上げが盛り込まれなかった。立憲民主党は同措置を盛り込む修正案を提示し、与党が受け入れたため、附帯決議を付した上で政府案に賛成した。政府案は衆議院で修正され、可決・成立した。(詳細 年金改革法案)
安定と安心をもたらす雇用・労働法制を推進
政府は217回通常国会に、カスタマーハラスメントや求職者等へのセクハラの防止対策等を柱とする「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案」を提出した。立憲民主党は、仮処分命令の申立ても含むカスタマーハラスメント対策を盛り込んだ「労働安全衛生法及び特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」(カスタマーハラスメント対策法案)を国民民主党、社会民主党と共同で参議院に提出するとともに、同法案をベースに政府案に対する修正案を取りまとめた。その内容を一部盛り込むことで与党と合意したため、立憲民主党は附帯決議を付した上で政府案に賛成した。政府案は衆議院で修正された上で可決・成立し、野党案は廃案となった。
雇用問題対策・賃上げプロジェクトチームは2025年4月、「雇用に安定と安心を。全ての労働者が豊かになる賃上げを!」を取りまとめ、雇用の基本原則を「期間の定めのない直接雇用」とすること、自らの希望や必要性に応じ「通常勤務」と「短時間勤務(短時間正社員)」を選び、行き来できる環境整備、残業代の割増率の引き上げ等の労働時間規制の強化等を打ち出した。
また、「年収の壁」対策として、「130万円のガケ」で手取りが減らないよう給付で埋める「就労支援給付制度の導入に関する法律案」を215回特別国会に再提出し、継続審議となった。
医療・介護提供体制に関する法案審議を要求
立憲民主党は介護崩壊を防ぐため、訪問介護事業者への支援金支給や訪問介護の介護報酬の期中改定を盛り込んだ「訪問介護事業者に対する緊急の支援に関する法律案」(訪問介護緊急支援法案)を国民民主党と共同で、他産業に比べて賃金が低い介護・障がい福祉従事者の処遇改善を図るための「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」(介護・障害福祉従事者処遇改善法案)を日本維新の会、国民民主党と共同で217回通常国会に再提出した。政府が提出した、地域医療構想の見直しや医師偏在対策等を柱とする「医療法等の一部を改正する法律案」に対して、本来の保険給付とは関連性が乏しい医師手当事業に医療保険の保険料を充てる規定を削除すること、市町村も独自に基金を設置し、医師確保ができるようにする規定を追加すること等を盛り込んだ修正案を準備した上で、立憲民主党が提出した議員立法との並行審議を求めた。しかし、議員立法の審議を避けたい与党は衆議院本会議で政府案の趣旨説明を行っておきながら、委員会での同法案の審議を拒み、政府案も議員立法も継続審議となった。
また、紙の保険証の新規発行が2024年12月2日に終了するのを前に立憲民主党は「保険証廃止延期法案」を215回特別国会に再提出し、新規発行終了後は同法案を撤回した上で、一定の条件が整うまで新規発行を継続する「保険証復活法案」を217回通常国会に提出したが、継続審議となった。
医薬品の品質や供給体制の安定を求める
政府は217回通常国会に医薬品の品質向上や供給量不足への対応等を柱とする「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」を提出した。立憲民主党は薬価の中間年改定が医薬品産業の競争力低下等を招き、医薬品不足の要因の一つでもあるとの認識の下、国民民主党、社会民主党と共同で216回臨時国会に「健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律の一部を改正する法律案」(医薬品不足を解消するための中間年改定廃止法案)を提出しており、政府案とともに審議された。立憲民主党は、政府案により、効果の不確かな医薬品も有効性の検証が不十分のまま承認されて流通すること、過度な規制等がなされて医療用医薬品へのアクセスが阻害されうることへの懸念について附帯決議を付し、医薬品の安定供給や品質・安全性確保の必要性に鑑みて政府案に賛成した。政府案は可決・成立したが、野党案は継続審議となった。

高額療養費の引き上げにストップをかける
立憲民主党は、政府が決定した高額療養費の自己負担限度額引き上げを凍結するため、「健康保険法等の一部を改正する法律案」(高額療養費自己負担引上げ凍結法案)を217回通常国会に提出した。粘り強く凍結を求めた結果、政府は引き上げを見送った。(詳細 高額療養費自己負担引上げ凍結法案)

万全の医療・介護提供体制をつくる政策を提言
厚生労働部門は2025年4月、公立・公的病院改革ワーキングチームとともに、現役世代の負担軽減、地域医療の崩壊防止を柱とする「持続可能な地域医療をつくる重点政策」を取りまとめた。高額療養費の自己負担の引き上げは行わず、まずは、その代わりに軽症患者の医療費を優先して見直すこと等を盛り込んだ。(公立・公的病院改革の詳細はp.39)また、同月、介護の人材確保や提供体制の整備等において確固たる中長期的ビジョンが必要との認識の下、すべての介護職員等の賃金について全産業平均の水準への引き上げを目指すこと等を盛り込んだ「介護の安心実現ビジョン(中間報告)」を取りまとめた。
戦後80年の節目に際しての課題を提起
政府が217回通常国会に提出した「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律案」に対し、立憲民主党は先の大戦で国に殉じた方々に弔慰の意を表する意義に鑑みて附帯決議を付した上で賛成し、本法案は可決・成立した。立憲民主党は弔慰金に代わる弔慰の方策についての検討等を盛り込んだ修正案を提出したが、否決された。
生殖補助医療法案に反対を決める
自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党が共同で217回通常国会で参議院に提出した「特定生殖補助医療に関する法律案」に対して、立憲民主党は対象を法律婚に限定したこと等が憲法違反の疑いがあり審議すべきでないとして、反対を決定した。本法案は廃案となった。