毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2025
(第214回臨時国会・第215回特別国会・第216回臨時国会・第217回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

法務・憲法

裁判所職員定員法改正案に賛成

政府は217回通常国会に、裁判所職員の員数を減少する「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」を提出した。裁判官の定員管理や家庭裁判所の体制整備などを求める附帯決議を付して、立憲民主党は賛成し、本法案は可決・成立した。

刑事デジタル法案の修正を実現

刑事訴訟の手続においてデジタル化を進めるため、政府は217回通常国会に、「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」を提出した。

同法案では、通信事業者に対して、メールなど電子データの提供を命じる電磁的記録提供命令と、この口外を禁じる秘密保持命令を創設した。しかし、捜査機関が市民のプライバシー情報などを収集、蓄積することへの歯止めを欠いていることなど、多くの問題点が指摘され、与野党で修正協議を行った。

協議の結果、①秘密保持命令に関し「1年を超えない期間」との期限を設けること、また、②附則には、事件との関連性のない個人情報を収集しないよう特に留意すること、および弁護人と被告人等のオンライン接見の推進を明記すること、以上2点の法案修正に合意した。

このため立憲民主党は修正案、原案ともに賛成し、同法は成立した。

民事裁判情報の活用促進法案に賛成

政府は217回通常国会に、民事訴訟の判決書などの活用を図るため、「民事裁判情報の活用の促進に関する法律案」を提出した。個人情報保護の拡充などを求める附帯決議を付して、立憲民主党も賛成し、本法案は可決・成立した。

譲渡担保、所有権留保に関する2法案に賛成

譲渡担保契約などを明文化、合理化するため、政府は217回通常国会に、「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案」と関係法案を提出した。労働債権保護の検討などを求める附帯決議を付して、2法案は全会一致で可決・成立した。

選択的夫婦別姓法案、28年ぶりの審議入り

立憲民主党は、2024年の総選挙以降、選択的夫婦別姓制度の実現に向け、精力的にヒアリングや討議を重ね、217回通常国会で「民法の一部を改正する法律案」を衆議院に提出した。立憲民主党案を含め3つの議員立法が提出され、衆議院法務委員会で1997年以来となる法案審議が行われたが、継続審議となった。(詳細 選択的夫婦別姓法案

2025.6.4 衆議院法務委員会で選択的夫婦別姓法案・立憲案を審議
2025.6.4 衆議院法務委員会で選択的夫婦別姓法案・立憲案を審議

入管制度の緊急課題に対処する2法案を提出

立憲民主党は野党3党1会派で217回通常国会に、「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」「令和6年入管法・技能実習法改正法の一部を改正する法律案」を参議院に提出したが、廃案となった。

本2法案は、政府が2023、2024年に行った入管法等改正において、とりわけ批判のあった①難民申請3回目以降の者を送還停止効の例外とする、②税未納等により永住者の在留資格を取り消す、などの規定について、緊急に見直すものである。

再審法の抜本見直しに向けて

えん罪被害者の一刻も早い救済のため、立憲民主党は2023年、再審法改正の骨子案を取りまとめ、2024年発足の超党派議員連盟でも積極的に活動し、また、同年の袴田さんの無罪判決にあたって談話を発表するなど、再審法の全面的な改正に向け精力的に取り組んできた。

立憲民主党は217回通常国会において、野党6党で「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」を衆議院に提出したが、継続審議となった。

同法案は、①再審請求手続における全面的な証拠開示制度を創設する、②再審開始決定に対する検察官による不服申し立てを禁止する、③原審、過去の再審に関与した裁判官を除斥、忌避できる、などと見直すものである。

他方、与党は議員立法の共同提出に加わらず、また、政府も2025年4月から始まった法制審議会に議論を委ねている現状にある。今回の野党6党案の早期成立に、改めて全力を挙げて取り組んでいく。

婚姻平等法案・GID特例法改正案を提出

立憲民主党は217回通常国会で、同性婚を法制化し婚姻の平等を実現する「民法の一部を改正する法律案」(婚姻平等法案)と、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(GID特例法)の一部を改正する法律案」を衆議院に提出したが、継続審議となった。

同性婚をめぐる訴訟では5件すべての高等裁判所が憲法違反との判断を下し、GID特例法については最高裁判所が2023年、生殖不能要件を違憲無効とした。多様性を尊重する社会の実現に向け、両法の成立こそ喫緊の課題である。

憲法審査会長ポストを獲得し議論を主導

217回通常国会の衆議院憲法審査会は、毎回具体的なテーマを設定し、そのテーマに沿って意見を述べるという形式を取った。内容としては、国会機能維持として選挙困難事態の立法事実や参議院の緊急集会の射程、臨時会召集期限、解散権制限などを扱い、国民投票法関連として放送CM・ネットCM規制やフェイクニュース対策などが議題となった。立憲民主党は、憲法審査会で議題となるテーマについて、党の憲法調査会で有識者などからヒアリングを行った。

また、2025年4月には欧州議会・憲法問題委員会議員団が来日し、衆参両院の憲法審査会のメンバーと憲法問題について議論を交わした。

解散権濫用防止法案を提出

憲法では、内閣不信任案の可決又は内閣信任案の否決の場合に衆議院を解散できると定めている(憲法69条)。しかし、天皇の国事行為を定めたにすぎない憲法7条を根拠として、内閣の恣意的な判断で党利党略のために解散が行われているのが現状である。特に2024年には、解散から選挙期日まで僅か18日しかなく、投票所入場券の遅配や洋上投票の準備不足、在外投票も間に合わないといった事態が生じ、有権者の参政権が十分に保障されなかったという深刻な課題が露呈した。

立憲民主党は、解散予定日・理由の通知や4分の1以上の議員の要求での国会質疑の義務化、選挙期日について選管の意見聴取の義務化などを内容とする「衆議院の解散に係る手続等に関する法律案」(解散権濫用防止法案)等を217回通常国会に提出したが、継続審議となった。

2025.6.10 解散権濫用防止法案を衆議院に提出
2025.6.10 解散権濫用防止法案を衆議院に提出