毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2025
(第214回臨時国会・第215回特別国会・第216回臨時国会・第217回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

文部科学

選挙公約の実現に向けて

2024年10月に行われた総選挙では、立憲民主党は政策の7本柱の一つに「子育て・教育」を掲げた。選挙後、公約の実現を目指し法制化に取りかかった。

学校給食の無償化については、保護者の負担軽減に加え、誰もが安心して給食を食べられるよう、国が一律に支援し公立の義務教育諸学校の給食を無償とする「学校給食法の一部を改正する法律案」(学校給食無償化法案)を、12月23日に日本維新の会、国民民主党と共同で衆議院に提出した。

高校授業料無償化については、家庭の経済力に左右されず、誰もが同じスタートラインに立てる社会の実現を目指し、所得制限のない高校授業料の無償化を訴えてきた。昨今では大阪府や東京都などが私立高校授業料に対して独自に所得制限のない上乗せ策を講じている。改めて文部科学部門で議論を行った結果、高校授業料について、①高等学校等就学支援金の所得制限の撤廃、②私立高校については所得制限を撤廃し授業料の全国平均である45万円まで支援、すべきとの結論に至った。また、公教育を充実させる観点から、老朽化などの対策が必要な公立学校への施設整備の支援を増額することとし、「高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案」および「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律の一部を改正する法律案」を2025年2月14日に衆議院に提出した。

2025.2.14 「高校授業料無償化拡充法案」および「公立高校の施設整備促進応援法案」を衆議院に提出
2025.2.14 「高校授業料無償化拡充法案」および「公立高校の施設整備促進応援法案」を衆議院に提出

内閣提出法案に積極的に対応

217回通常国会の文部科学関連の内閣提出法案に関して、修正等の積極的な提案を行った。

「大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案」は、「教育費の負担の一部を社会全体で負担する」という考え方に立った点は評価できるものの、①大学等無償化の対象者を低所得者世帯または扶養する子どもが3人以上の多子世帯に限定、②修学支援の対象となるのは、要件を満たした確認大学等に限定、③給付型奨学金と大学等の無償化財源は消費税増税分で確保、等の問題があった。そこで、①大学等毎の対象者数と減免額や確認要件を満たさなかった大学等の数等の調査公表、②消費税以外の財源も活用、③大学等の授業料等の段階的無償化に向けた工程表の策定、④授業料減免額および確認要件について速やかな見直し等を内容とする修正案を提出した。修正案は否決されたが、高等教育の無償化の推進、消費税に限らない安定的な財源の確保、修学支援新制度の見直しについて、附帯決議を付して賛成し、政府案は可決・成立した。

「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案」は、立憲民主党の修正要求がほぼ受け入れられ、可決・成立した。(詳細 給特法改正案

学習指導要領の見直し

学習指導要領は、全国のどの地域でも一定の水準の教育を受けることができるよう、教育課程を編成する際の基準として定められているが、授業時数と学習内容のバランス、教員の業務負担増大・多忙化、評価基準の不明確さ、生徒の積極的な学習意欲の欠如、デジタル対応の遅れ等の問題点が指摘されている。文部科学大臣は、2024年12月、中央教育審議会に学習指導要領の在り方について諮問を行い、審議会で議論がなされている。

立憲民主党は、学習指導要領の見直しが、今後の教育の在り方や教員の働き方に大きな影響を及ぼすものであることから、見直し状況について文部科学省からヒアリングを行うとともに、現行のカリキュラムが子どもに過大な負担をかけている点について有識者との意見交換を行った。今後も定期的に学習指導要領改訂の検討状況のヒアリングや有識者との意見交換を続けていく。

隠れ教育費負担の軽減

公立義務教育諸学校の授業料、教科書代は徴収されてはいないものの、ドリルや楽器、遠足代など、様々な費用負担が求められる。この費用が、小学校6年間で50万8600円、中学校3年間で42万2800円の負担(=隠れ教育費)となっており、有識者からヒアリングおよび意見交換を行った。

隠れ教育費については、保護者の負担を軽減すべきではあるが、単純に公費負担するのではなく、①不要なものや共有すればいいものなどの仕分けが必要なこと、②現場の裁量増によって支出を抑えられる可能性があることから負担軽減策についてさらに検討を進めていくこととなった。

私立大学の入学金問題に取り組む

現在、多くの私立大学が、合格発表直後に入学金の納入日を指定し、複数の私立大学や国公立大学を受験する受験生が、入学金を二重払いしている実態について、有識者からヒアリングおよび意見交換を行った。文部科学省もようやく、2025年6月26日に「入学しない学生の納付する入学料に係る負担軽減のための方策を講ずるよう努めること」等を内容とする「私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について(通知)」を発出した。

国立劇場建て替え問題に着手

国立劇場については、国立劇場の未利用容積を活用したホテル建設等を内容とする「国立劇場の再整備に係る整備計画」が策定され、2回の入札が不調、不落となり、整備計画が一部改訂された(民間収益施設の提案条件の自由化等)ものの、現在も閉鎖されたまま改築には至っていない。文部科学部門として、国立劇場が、伝統文化の継承、発展という本質的かつ基盤的な役割を果たすためにどのような施設であるべきか、改築にこだわらず改修という可能性も含め、検討を進めることとなった。

スポーツ基本法改正の取り組み

スポーツ基本法制定から14年近くが経過し、スポーツを取り巻く状況の変化に対応するため、立憲民主党議員も参加している超党派のスポーツ議員連盟で議論が重ねられ、改正案が取りまとめられた。

改正案は、健康長寿社会や共生社会の実現、地域や経済の活性化などの社会課題の解決に加え、①スポーツに親しむことのできる機会の確保等、多様な国民一人ひとりの生きがいおよび幸福の実現等について追加、②スポーツによる地域振興の推進、スポーツによる共生社会の実現等の追加、③多様な需要に応じたスポーツを楽しむ機会等の確保、eスポーツの充実、スポーツの公正性および公平性の確保(ドーピング防止等)を追加するものである。217回通常国会に衆議院文部科学委員長から提出された改正案は可決・成立した。