毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2025
(第214回臨時国会・第215回特別国会・第216回臨時国会・第217回通常国会の総括)

第3章焦点となった法案・課題への対応

中途半端な改正案を大幅修正給特法改正案

教職員の厳しい労働環境

1971年に制定された給特法により、教職員の「残業代」は当時の時間外勤務8時間に相当する教職調整額4%のみで、時間外勤務に従事しても自主的・自発的勤務とされ、「定額働かせ放題」とも言われる状況が生まれた。

OECD国際教員指導環境調査(TALIS)では、中学教員の一週間の仕事時間の平均は56時間で、日本は参加国中最長となっている。また、文部科学省の調査では残業が、月80時間超の教諭の割合は、小学校で14.2%、中学校で36.6%と高く、持ち帰り残業については増加が認められ、教員の長時間労働が常態化している。この劣悪な労働環境は、教員自身の労働問題であるだけではなく、子どもたちの教育にも悪影響を及ぼしている。

給特法改正案の内容と評価

政府が217回通常国会に提出した給特法改正案は、①教職調整額の基準となる額を給料月額の4%から10%まで段階的引き上げ、②教育委員会が業務量管理・健康確保措置実施計画を策定し、公立学校が講ずる学校運営の改善を図るための措置への計画適合を義務付ける等の内容であった。

教職調整額の引き上げは明記されたものの、時間外在校等時間の削減目標や削減のための工程表の策定等、労働環境改善のための具体的措置は明記されておらず、「給料が上がったから勤務時間が長いのは仕方がない」となることが懸念された。

子どもたちの最善の利益の保障(ゆたかな学びの保障等)や教職員の働き方改革推進のためには、教職員の業務削減や定数改善が不可欠であるが、改正案にはこれらが全く含まれていなかった。

修正案の提示・交渉・合意

文部科学部門では、関係団体および有識者と意見交換を行い、公立学校の教職員の業務の厳格化や、総授業時数の削減などによる業務削減等、働き方改革を具体的に進めるための修正案を提示すべきとの結論に至った。

修正案については、広く合意を得られるよう、2024年末の文部科学・財務大臣合意の内容を中心に策定することとなった。具体的には、①今後5年間に平均の時間外在校等時間を約3割縮減し、月30時間程度に縮減することを目標とする、そのための工程表の策定、②業務量削減のため、a.年間の総授業時数の削減、b.教職員定数の標準の改定、c.教育職員以外の学校教育活動を支援する人材の増員、d.部活動の地域移行を円滑に進めるための財政的な援助等について、政府が具体的に検討して法制上の措置等を講ずること、③中学校の35人学級の実現について明記、④教員の勤務条件改善のための勤務実態調査の実施等について修正を求めることとした。

与野党各党と協議を重ね、修正提案が概ね了解されたことから、給特法改正案については、修正の上、賛成することとなり、法案は可決・成立した。

なお、立憲民主党主導で時間外在校等時間の虚偽記録の防止の徹底、教育課程の編成の在り方、教員の担当授業時数の軽減、公務災害事案の速やかな調査と再発防止、学校における働き方改革推進のための国の広報発信、主務教諭配置に伴って教諭の給与引き下げを行わないよう周知徹底、幼稚園教員の処遇改善についてのフォローアップ、教育職員の安定的な確保等について附帯決議を付した。