毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2025
(第214回臨時国会・第215回特別国会・第216回臨時国会・第217回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

経済産業

妥当性のあるAI・半導体産業基盤整備を論議

政府は2024年11月、「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を策定し、2030年度までの間に10兆円以上の公的支援を行うこととした。さらに同フレームの一環として、先端・次世代半導体の国内生産拠点の整備・量産や研究開発の支援を行う「情報処理の促進に関する法律及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」を217回通常国会に提出した。

経済産業部門では2025年2月、政府から研究開発の支援を受けているラピダス株式会社が北海道千歳市に建設中の先端半導体の生産工場や民間企業が建設中のデータセンターを視察した。加えて、政府のほか、ラピダス関係者や半導体・AI分野の有識者からヒアリングを行いつつ本法案への対応を協議した。

先端半導体の確保および半導体・AI需要を見据えた産業競争力の強化は国家戦略として重要である一方、機密事項も含まれる先端半導体の開発・生産・販売の全体像や民間資金の調達見込みが不透明な中で、国が税金を原資とした大規模な資金供給を続けることを懸念する意見があった。これらの意見を踏まえ、事業計画を進めつつも公金支援の妥当性を確認していくため、先端半導体の研究・開発から量産化までの期間を中心に3カ月に1回を目途として、事業計画の進捗状況等について国会報告を行う修正を求め、与党と協議を行った。

その結果、事業計画の進捗状況の国会への報告は附帯決議で担保し、現物出資に切り替わる際の資産の適正な評価、政府および民間出資のバランスの考慮等を委員会審議でただしつつ賛成し、本法は成立した。

2025.2.10 ラピダスが建設中の先端半導体生産工場を視察
2025.2.10 ラピダスが建設中の先端半導体生産工場を視察

下請法等改正案の修正を実現

政府は217回通常国会に「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」(下請法等改正案)を提出した。立憲民主党は修正案を提案した。本法案は修正議決され可決・成立した。(詳細 下請法等改正案

従業員の協力を踏まえた早期事業再生を整備

政府は217回通常国会に「円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案」を提出した。本法案は、経済的に窮境に陥るおそれのある事業者の早期での事業再生の円滑化を図るため、経済産業大臣の指定を受けた公正な第三者の関与の下、金融機関等である債権者の多数決(議決権の4分の3以上の同意等)および裁判所による決議の認可により、金融債務に限定して事業者の債務の権利関係の調整が行える手続等を整備するものである。

本法案について経済産業部門・財務金融部門・法務部門合同会議で審査を行った。政府は本法案提出の理由を「事業者が早期での事業再生に取り組み、事業価値の毀損や技術及び人材の散逸を回避できる制度基盤を整備し、経済の新陳代謝機能を強化しておくことが重要」と明示し、本法案作成に向けて議論してきた経済産業省の審議会の報告書では「事業再生に当たっては、従業員の協力も必要であることにも留意が必要」と指摘されていた。しかし事業価値の毀損、技術および人材の散逸の回避や早期事業再生計画の遂行過程での従業員の協力について、本法案で条文として明確に規定されていなかった。関係団体からは、これまでも他の手続による事業再生で人員整理や労働条件の引き下げ等が頻発している実態が指摘され、労働者保護の観点で懸念を持つ意見があった。

また信用を毀損せず早期段階で事業再生する際には、従業員の協力を得て手続情報の漏洩防止を維持し協議を進めていくことや、会社更生法や民事再生法といった法的整理に至る前の段階で本法律が過度に開始要件を広げすぎないようバランスを取ることも重要との意見があった。

立憲民主党はこうした意見を踏まえ修正項目を取りまとめ、政府・与党と協議を行った。その結果、事業価値の毀損や技術および人材の散逸の回避を本法案の目的に明記し、事業者が早期事業再生計画を策定する際は従業員の協力や人材散逸回避の見込みを確認する事項を含める修正を行うことで一致し、本法案は修正議決し可決・成立した。

実効性あるCO2排出量取引整備に向けて

政府は217回通常国会に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(GX推進法改正案)を提出した。2023年成立のGX推進法に基づき、2050年カーボンニュートラル(CN)実現と経済成長との両立を実現するための成長志向型カーボンプライシング構想の具体化を進める中で、本法案は排出量取引制度の法定化、資源循環強化のための制度の新設、化石燃料賦課金の徴収に係る措置の具体化、GX分野への財政支援等を規定するものである。

経済産業部門・環境部門・環境エネルギープロジェクトチーム合同で本法案の審査を行い、事業者への排出枠割当てにおける足下の地域の産業基盤や雇用への悪影響に対する配慮、国の2050年CNやパリ協定での目標との整合性に照らした実効的な制度設計の妥当性などを委員会質疑でただしつつ、附帯決議を付して賛成することとし、本法は成立した。

議員立法をバージョンアップし再提出

立憲民主党は217回通常国会で、2024年の衆議院解散により廃案となった議員立法2法案を衆議院へ再提出した。

一つは「中小企業正規労働者雇入臨時助成金の支給に関する法律案」(社会保険料・事業者負担軽減法案)で、国民民主党と共同提出した。本法案は、正規労働者を新たに雇用した中小企業に対し、新たに生じる社会保険料事業主負担の一部を長期にわたり支援することで、中小企業の人材確保の向上と労働者の生活の安定・向上を図り、中小企業の活性化や消費の拡大、地域の活性化を目指すものである。

もう一つは昨今の貿易事情を踏まえて一部を見直した「自動車産業における脱炭素化の推進に関する法律案」で、国民民主党および衆議院会派である有志の会と共同提出した。本法案の主な内容は、2050年までの脱炭素社会実現に向け、自動車産業が最近の米国の関税措置など国際的な貿易事情や経済的・社会的環境の変化に対応しつつ基幹産業として日本の経済活動をけん引している役割を踏まえ、自動車産業の脱炭素化の推進に関し基本理念や国の責務を明らかにするとともに、施策の基本事項を定め、自動車産業の脱炭素化を総合的かつ一体的に推進し、自動車産業の国際競争力の強化を図るものである。

両法案は衆議院で継続審議となった。